CDP【上級者向け】――さらなるスコアアップに向けたポイントを解説

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高まるCDPへの意欲

「世界の企業や自治体が、気候変動や温室効果ガス削減に対してどんな取り組みをしているのか」――それを投資家に代わって分析・評価するために、各企業に質問書を送りその結果を開示しているCDP。2000年に設立された後、毎年質問書を送付しており、その回答率は年々増加しています。CDPレポートによると、2022年の回答組織数は約2万と過去最多を記録。 2021年と比べて、38%もの増加となりました。ちなみに日本では、プライム市場上場企業 1,000 社以上を含む 1,700 を超える企業・団体が回答。CDPへ回答することが徐々にスタンダードになってきている状況です。 

こうした流れを受け、CDP回答の次のステップとして「スコアアップ」を目標に掲げる企業様も多いのではないでしょうか?そこで今回は、CDPスコアアップのポイントをお伝えします。

4つの柱と連動しているCDP

CDP気候変動質問書のポイントは、TCFDの開示要求項目と整合していること。TCFDが求める「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に沿って、現在の気候変動への取り組みを開示することが求められています。

2023水セキュリティ質問書項目

加算式でUPしていく、スコアリング

CDPでは「情報開示」「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」の4つの項目の得点率に応じて、A~D-(質問書に回答しない場合は、F)のスコアが決定。具体的には下記のような基準で判断されています。

CDPスコアリングの仕組み

気を付けたいのは、加算式でランクが決まっていくということ。たとえば…

加算式のランク付けの仕組み

上記のような2社を比べた場合、「認識・マネジメント・リーダーシップ」においてはB社の方が高いですが、スコアはA社より低い【Dスコア】となります。この原因となるのは、【情報開示率の低さ】。情報開示をベースとした“加算式”でスコアが決まるCDPでは、どれだけ先進的な取り組みをしても、情報開示や認識ポイントで閾値を超えていないと評価される土台にすら上がれません。そのためまずは出来ていないことがあっても、定性的な表現に留まったとしても、すべての回答欄を埋めて開示していくことが重要です。

的確な対応で、効率的なスコアアップを

ではスコアアップを目指すには、具体的にどのような対応が必要なのでしょうか?前述した通りCDPの質問書は、TCFD開示要求項目に整合しています。そのため【1】4要素を抑えた取り組みを進めていくこと、【2】定性的な数字を出していくことが重要。具体的な方法については「目指したいスコア別」で紹介します。

■「Cスコア以上」を目指すなら…

【情報開示】

  • 設問の回答を必ず埋める(コメント欄は任意)
  • Scope1,2排出量を算定し、データを開示する
  • 数値記入欄において算定できていない場合も「0」と入力をする

【認識】

  • TCFDで要求されているガバナンス体制を整える
  • シナリオ分析を実施する
  • Scope3のカテゴリの関連性評価と、関連性のある項目に対して算定に取り組む

■「Bスコア以上」を目指すなら…

【マネジメント】

  • 具体的な数値等定量的なデータまで開示する
  • 全社的かつ、Scope1,2排出量の7割以上を対象としている削減目標を設定する
  • 自社のScope3を把握している
  • 再エネ導入割合25%以上を目指す
  • 排出量への第三者検証を行う
  • 法定開示書類等での気候関連情報開示を行う

「Aスコア以上」を目指すなら…

リーダーシップが求められるAスコア以上に選定されるためには、一定の得点率の他に下記のような条件を満たす必要があります。

  • 再エネ導入割合50%以上
  • 1.5℃シナリオに整合した移行計画を策定している
  • 気候関連課題を反映した事業計画や予算策定をしている
  • SBTに準拠した目標設定や、Scope3の全社的かつ約67%以上を対象としている目標、ネットゼロ目標等野心的な削減目標を設定する
  • 全調達、またはScope3の4割を占める割合のサプライヤーを対象とし、気候関連のエンゲージメント活動をしている

またCDP気候変動質問書においては、これに加え下記の条件も求められます。

  • スコープ1および2総排出量を回答している
  • 重要な範囲を報告除外対象に含めていない
  • スコープ1,2総排出量とスコープ3排出量の1カテゴリそれぞれについて70%以上の第三者検証を受けている

回答方法も重要なポイントの1つ

上記のように技術的な取り組みを進めるのはもちろん、CDPでは回答の仕方も大切。ここではCDPでよく求められる3つの回答方法をお伝えします。

【1】自社固有

ポイントとなるのは、「同業や同じ地域で操業している他の企業と、区別できる内容であるか」ということです。たとえば下記のような情報を開示する際に、自社固有の表現が求められます。

<例>

  • 自社独自の数値(消費エネルギー量、経費、売上、CO₂排出量等)
  • 自社独自の製品名やその特長
  • 操業地域(国、市区町村等)
  • 具体的に自社が受けた被害、影響

ちなみに質問書では下記のように問われます。

【設問】貴社の事業に重大な財務的または戦略的な影響を及ぼす可能性があると特定されたリスクを記入してください。

【NG例】地球温暖化対策税の強化によるコスト増

【OK例】自社の主要事業は製造業であり、自社にて製造した製品の売上高が総売上高の84%を占めている。現在、製品製造時のCO2の排出量が多く、2021年度の自社での排出によるCO₂排出量は、Scope1で215,000(tCO₂)、Scope2で50,000(tCO₂)となる。当社は2021年度の売上原価が98,000百万円であったが、地球温暖化対策税が強化された場合、この排出量に対して更なる税金が課されることになり、このうち売上原価が〇%増加するリスクが生じる恐れがある。

【NG例】のように、どの企業でも当てはまる記載の場合は自社固有として認められません。【OK例】のマーカー部分のように「自社だからこそ言える表現」をすることが大切です。

【2】ケーススタディ

ポイントとなるのは、「特定の状況や課題に対してどのようなプロセスや戦略、または意思決定がされ、実際の企業行動に反映されているか」ということ。的確な説明のために、Situation(状況)Task(課題)Action(行動)Result(結果)を示す「STARアプローチ」に沿った記載が求められます。

質問書では下記のように問われます。

【設問】特定されたリスクについて、対応内容と費用計算の説明をしてください。

【NG例】排出量削減のため当社の主力製造拠点であるK工場において、(具体的なエネルギー削減活動についての詳細)のプロジェクトを実施し、約9,000MWhのエネルギーを節約した。

【OK例】A社においてコスト競争力とCO₂排出量の削減を両立するためには、今後継続的に製造効率の最適化を図る必要があります。A社の主力製造拠点であるK工場では、当社製品の年間製造数40%以上を占めており、排出量削減においての重要なホットスポットとなっています。そのためK工場でのエネルギー消費量を最適化するプロジェクトを2021年7月より開始しました。A社はこのプロジェクに際し約1,700万円を投資し、(具体的なエネルギー削減活動についての詳細)にすることでエネルギー使用量の削減に取組んでいます。これにより年間約9,000MWhのエネルギーが節約できると試算しています。

【3】明確な根拠

ポイントは「実施に至った方法論や、意思決定及び行動に対する論理的な根拠を説明すること」です。

質問書では下記のように問われます。

【設問】サプライヤーとの気候関連エンゲージメント戦略の詳細を示します。このサプライヤーのグループを選択した根拠と、エンゲージメントの範囲を説明してください。

【NG例】Scope3排出量はA社の全体の排出量の7割を占め、サプライヤーへ気候関連問題に対する意識づけを行うことはA社の取り組みにとっても重要であると認識しています。そのためサプライヤーに対し当エンゲージメント活動を実施しました。

【OK例】2021年5月から9月に執り行われた当プロジェクトでは、以下の基準に基づいてサプライヤーを選択しました。

①当社のScope3排出量に対する割合 ②取引額の割合 ③当社戦略上の重要性

該当するサプライヤーは、A社にとってScope3カテゴリ1の62%、Scope3排出量の総排出量の52%に相当することから、排出量削減に向けて協働することが重要であると考えています。排出量削減を促すため、取引額が多く、戦略上重要であるサプライヤーを招待し、気候関連問題に焦点をあてたワークショップを開催しました。

ご紹介した3つの回答方法のように、CDPでは理由や考え方を具体的に書く“独特な回答方法”が求められています。

求められる回答で、着実なスコアアップを

そんな“独特な回答方法”に沿って回答した企業様の中には、着実なスコアアップを叶えた企業様も。ここではその一例をご紹介します。

【株式会社エフピコ様】

■課題:「B」→「C」→「B」→「B-」とスコアが安定しないこと

■結果:3年間で「B-」→「B」→「A-」を達成

スコアが上がった大きな理由を、「スコアラーに対してきちんと伝わる表現ができたから」と話すエフピコ様。というのも、「B-」から「B」へとアップするまでの間に、社内での取り組みとして特別何かを始めたり、大きく改善したりしたわけではなかったそうです。弊社が提供する模擬採点や回答の振り返りといったサービスを通して、「自分たちで見つけることが難しかった当社のポテンシャルを、引き出してもらった」とのこと。結果3年間の支援期間を通して「B-」→「B」→「A-」とスコアアップを達成されました。

※エフピコ様のケーススタディを詳しく知りたい方はこちら

CDP回答対応の次のステップへ

今回のコラムでは、「CDPでスコアアップを目指すためのポイント」についてご紹介いたしました。現在、700社以上の機関投資家が活動を支援しているCDP。そのデータは金融市場でも活用されており、サステナビリティ・リンク・ローンを用いて資金調達をする際のSPT(サステナビリティに関する目標)にもなっています。「B以上とれていないと金利優遇がつかない」という基準を設定している金融機関もあり、その活用範囲は多岐にわたります。

このようにスコアアップすることで、取引先やステークホルダーから評価されることはもちろん、資金調達にも役立つCDP。CDP回答の次のステップとして、スコアアップに挑戦してみませんか?

CDP回答コンサルティングについて

CDP気候変動コンサルティングパートナーである弊社では、豊富な実績のもとCDP質問書への回答コンサルティングサービスを提供しています。サービスについて詳しく知りたい方は、下記ボタンからご確認ください。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

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