日本のSDGs達成度は低い?ランキングと2030年以降の展望【後編】

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日本のSDGs達成度は低い?ランキングと2030年以降の展望【後編】 サムネイル

前編では、SDGsの期限が「2030年」であること、そして世界的に進捗が遅れている現状について解説しました。「世界全体で遅れているなら、日本も仕方ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、日本の状況は決して楽観視できるものではありません。

本記事(後編)では、世界ランキングにおける日本の現在地と、2030年、そしてその先を見据えて企業や私たちが今すぐ取るべきアクションについて解説します。

【 ↓ 前編はこちらから ↓ 】

SDGsの期限はいつまで?
SDGsの期限はいつまで?2030年までの目標達成度と世界的な進捗・課題【前編】

日本のSDGs達成度はどのくらい?

結論から言うと、日本は世界ランキングで年々順位を下げており、特定の分野で「深刻な課題あり」と評価されています。

世界ランキングにおける日本の立ち位置

国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表した最新の「Sustainable Development Report 2025」によると、日本の達成度は世界167カ国中19位でした。

SDGs Index Rank Top20
出典:The SDG Index and Dashboards. Sustainable Development Report 2025を基に弊社作成

一見すると悪くない順位に見えますが、2017年の11位をピークに、低下傾向にあります。欧州諸国がスコアを伸ばす一方で、日本の改善スピードが鈍化していることが要因です。

日本で取り組みが進んでいない分野とは?

同レポートの4段階評価において、日本は6つの目標で「赤信号(深刻な課題あり)」が点灯しています。 ジェンダーや環境問題といった従来の弱点に加え、全体的な評価が厳しくなっています。

目標 内容 日本の現状と課題
目標5 ジェンダー平等 女性議員の少なさや賃金格差により、長年最低評価が続く。
目標12 つくる責任 つかう責任 プラスチックごみや電子廃棄物の管理、消費のあり方に課題。
目標13 気候変動 化石燃料への依存が高く、脱炭素のペースが世界基準に遅れている。
目標14 海の豊かさ 漁業資源の乱獲や海洋汚染対策が不十分。
目標15 陸の豊かさ 生物多様性の損失(レッドリスト)が悪化の一途を辿る。
目標2/17 その他 持続可能な農業(窒素管理)や、パートナーシップの分野でも課題が山積。

かつての「得意分野」も評価ダウン

特筆すべきは、前年(2024年版)唯一「達成済み(緑信号)」を維持していた「産業と技術革新(目標9)」までもが、評価を落とした点です。かつて日本の強みであった「質の高い教育(目標4)」も依然として達成基準を下回ったままであり、得意分野での後退が目立ちます。

現在、日本が「達成済み(緑信号)」を維持できているのは、長寿国としての強みである「すべての人に健康と福祉を(目標3)」のみです。

評価レポートはこちらから確認できます。
The SDG Index and Dashboards. Sustainable Development Report 2025

企業のSDGs対応はいつまでにすべき?

企業にとってSDGs対応は今すぐ取り組むべき経営課題です。「2030年までにやればいい」という認識は誤りです。なぜなら、ビジネスの世界ではすでにSDGsへの取り組みが「取引条件」や「資金調達の条件」になっているからです。

企業が対応を急ぐべき2つの理由

サプライチェーンからの排除リスク

大企業は、自社だけでなく「取引先」にもCO₂削減や人権配慮を求めています。「SDGsに対応していない企業とは取引しない」という動きが加速しているため、中小企業であっても無関係ではいられません。

ESG投資の拡大

投資家は、財務情報だけでなく「環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)」を重視して投資先を選びます。SDGsへの取り組みが見えない企業は、資金調達が難しくなり、リスクを抱えることになります。

対応しない企業のリスク 対応する企業のメリット
  • 取引停止のリスク
  • 資金調達難
  • 「ブラック企業」という風評被害
  • 優秀な人材の離職
  • 新たなビジネスチャンスの獲得
  • 企業ブランドの向上
  • 優秀な人材の採用・定着
  • コスト削減(省エネ等)

2030年までにSDGsを達成できない場合の対応策

もし、2030年までに目標を達成できなかった場合、世界はどう動くのでしょうか?

Q. 期限に間に合わなかったらどうなりますか?

A. 延長ではなく、より厳しい「新ルール」が始まります。
2030年ですべてが終わるわけではありません。2030年以降も、未達成の課題を解決するための新たな国際目標(ポストSDGs)が策定されることが予定されています。

今後のシナリオ:ポストSDGsの可能性

専門家の間では、次のような枠組みが予想されています。

  • 課題の厳格化
    「努力目標」から、より拘束力のある「規制」へと強化される可能性があります(例:炭素税の導入など)。
  • 新テーマの追加
    AI倫理、宇宙開発、新たなパンデミック対策など、2015年当時には想定されていなかった課題が追加される可能性があります。

重要なのは、「期限が過ぎたから終わり」ではなく、「2030年以降、持続可能な社会を作るためのハードルはさらに上がる」と認識しておくことです。

SDGs達成に向けて個人・企業ができること

最後に、私たち一人ひとりが今日からできることを整理します。小さな行動も、日本の人口1億人が行えば大きなインパクトになります。

日常生活での「投票」を変える(エシカル消費)

私たちが買い物をする際、「価格」だけでなく「背景」を見て選ぶことは、企業への強力なメッセージ(投票)になります。

(例)

  • MSC/FSC認証ラベルの商品を選ぶ
    持続可能な水産物や木材を使用している証。
  • フードロス商品をあえて買う
    賞味期限が近い商品を選ぶことで廃棄を減らす(「てまえどり」運動)。
  • マイボトル・マイバッグの徹底
    使い捨てプラスチックを減らす。

FSC認証について解説した記事はこちらから ↓

FSC認証とは?
FSC認証とは?押さえておくべき基礎的な内容から、製品事例まで完全解説!

持続可能な社会を作るための行動指針リスト

企業や個人が意識すべき具体的なアクションをリスト化しました。

誰が 具体的なアクション例 期待される効果
個人
  • 家庭での節電、再エネ電力への切り替え
  • リサイクル、リユースの徹底
  • 選挙で環境政策を重視する候補者に投票
  • CO₂削減
  • 資源循環
  • 政策への意思表示
企業
  • ペーパーレス化、リモートワーク推進
  • ジェンダーバランスの見直し
  • 製品の長寿命化、修理サービスの充実
  • 業務効率化
  • イノベーション創出
  • 顧客信頼度UP

まとめ:2030年はゴールではなく通過点

前編・後編を通じて、SDGsの期限と現状について解説しました。

  • SDGsの期限は2030年だが、世界も日本も進捗は遅れている。
  • 日本は特に「ジェンダー」「気候変動」「消費責任」に課題がある。
  • 企業は「生き残り」をかけて、今すぐ対応する必要がある。
  • 2030年以降も課題は続くため、私たちの行動変容が不可欠。

「いつまで?」という問いへの答えは「2030年まで」ですが、本当に大切なのは「2030年以降も私たちが豊かに暮らしていけるか」です。
まずは今日の買い物や職場の小さな改善から、未来を変えるアクションを始めてみませんか。

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日本のSDGs達成に関するよくある質問

Q. 中小企業や個人店もSDGsへの対応は必要ですか?

A.はい、規模に関わらず必要になりつつあります。大企業が取引先を選定する際、SDGsや環境への配慮を条件にする「グリーン調達」が増えています。「対応していない」という理由だけでサプライチェーン(供給網)から外されてしまうリスクがあるため、中小企業も早めの対応が生存戦略として重要です。

Q. 個人の小さな行動で、本当に世界は変わるのでしょうか?

A.はい、消費者の行動変容は企業を動かす最大の力です。例えば、消費者が「環境に配慮した商品」を優先して選ぶようになれば、企業は売れる商品を作るために変わらざるを得ません。これを「エシカル消費(倫理的消費)」と呼びます。私たちの日々の買い物は、未来の社会に対する「投票」と同じ効果を持っています。

Q. 日本の達成度が低いままだと、私たちの生活に影響はありますか?

A. 経済的なデメリットや、災害リスクとして跳ね返ってきます。世界からの評価(ランキング)が下がると、海外からの投資や人材が集まらなくなり、日本経済の停滞を招きます。また、気候変動対策の遅れは、猛暑や豪雨災害の激甚化といった形で、私たちの安全や食卓(農作物の不作や値上げ)に直接的な影響を及ぼします。

監修者のプロフィール

榎本 貴仁の写真
榎本 貴仁
(株)エスプールブルードットグリーン 執行役員 営業本部長 兼 環境経営推進本部長

CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

The SDG Index and Dashboards. Sustainable Development Report 2025(2025年12月参照)

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