今の時代、「バリアフリー」という言葉は広く認知されていますが、バリアフリーに種類があるということはあまり認知されていません。本記事は、多様性を守る動きが浸透していく中で、「バリアフリーという言葉は知っているけど、具体的にはよくわかっていない」というみなさんの疑問を解決できます。
また、実際の事例もご紹介していますのでバリアフリーの導入を検討されている担当者様の参考になれば幸いです。
さらに、本記事の最後では、「社内でバリアフリーやSDGsへの理解を深めたいが、どうしたらよいかわからない」とお悩みのご担当者様に向けて、弊社がご提案する「PivottAサステナ」についてもご紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読んで分かること
目次 Index
「バリアフリー」とは、社会の中に存在する様々な障壁(バリア)を取り除くことを指します。すべての人が社会というコミュニティに参加できるようにすることがバリアフリーの目的です。これは、多様性を尊重するうえでも重要な考え方です。
また「バリア」には、大きく分けて4つの種類があります。
<バリアの種類>
この4種類は、障がいのある方が社会生活の中で感じる壁を取り除くために必要だと考えられています。
「自分にとって当たり前でも、誰かにとっては当たり前ではない」ということを理解しながら、誰もが社会や生活に不自由を感じないよう、共生できる社会を実現するために、「バリアフリー」は欠かせない考え方です。
また社会には、年齢、性別、国籍、価値観、宗教、身体的特徴など、一人として同じ人間はいません。しかし、現在の社会の仕組みは時として少数派や多様な価値観を持つ人々に壁を感じさせてしまうことがあります。
バリアフリーについて調べている皆さんは、「ユニバーサルデザイン」という言葉もご存じではないでしょうか?
バリアフリーと混同されがちですが、ユニバーサルデザインはバリアフリーと同じ意味ではありません。
2008年に内閣府が定めた「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」をもとに、総務省が資料としてまとめています。
<バリアフリー>
障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。
<ユニバーサルデザイン>
バリアフリーは、障害によりもたらされるバリア(障壁)に対処するとの考え方であるのに対し、ユニバーサルデザインはあらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。
出典:バリアフリーとユニバーサルデザイン.総務省.より引用
簡単にまとめると、
バリアフリー | ユニバーサルデザイン |
---|---|
障がい者の社会参加を困難にしている障壁の除去。 | 障がいの有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいように、都市や生活環境をデザインする。 |
上記のような違いになります。
例えば、普段見ているトイレの人型のマークは、まさにユニバーサルデザインに該当しており、どちらのトイレが男性用か女性用か目瞭然となっています。
一方で、商業施設でよく見かけるスロープはバリアフリーに該当するでしょう。「段差」という車椅子の方にとっての「障壁」を除去することで、スムーズに上り下りがしやすくなり、バリアフリーを実現できているといえます。
バリアフリーとユニバーサルデザインの意味に違いはありますが、誰もが社会参加や生活がしやすい環境にしていくことを目指しているところは一緒だといえるでしょう。
ユニバーサルデザインは、1980年代に建築家ロナルド・メイスによって提唱されたもので7つの原則があります。
①:誰にでも公平に利用できること
定義:誰にでも利用できるように作られており、かつ、容易に入手できること。
②:使う上で自由度が高いこと
定義:使う人の様々な好みや能力に合うように作られていること。
③:使い方が簡単ですぐわかること
定義:使う人の経験や知識、言語能力、集中力に関係なく、使い方がわかりやすく作られていること。
④:必要な情報がすぐに理解できること
定義:使用状況や、使う人の視覚、聴覚などの感覚能力に関係なく、必要な情報が効果的に伝わるように作られていること。
⑤:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
定義:ついうっかりしたり、意図しない行動が、危険や思わぬ結果につながらないように作られていること。
⑥:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
定義:効率よく、気持ちよく、疲れないで使えるようにすること。
⑦:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
定義:どんな体格や、姿勢、移動能力の人にも、アクセスしやすく、操作がしやすいスペースや大きさにすること。
ユニバーサルデザインからバリアフリーに話は戻りますが、誰もが暮らしやすい社会を作るためには、心のバリアフリーも大切です。設備が整っていてもそれを利用している人たちに意識的なバリアがあると、その他の誰かにとっては暮らしづらい社会となってしまいます。
心のバリアを感じる一例
皆さんもこのような例やそれ以外にも、心がモヤっとする場面に遭遇したことが一度や二度はあるのではないでしょうか?
冒頭で「4つのバリア」について触れましたが、ここからは具体的な事例も交えながらそれぞれのバリアについて改めて説明していきます。
事例をもとに、バリアフリーの導入を検討されている担当者様や、アイデアを探している方の参考となれば幸いです。
物理的バリアとは、身体に不自由を抱える人にとって、移動や生活の上で支障をきたす物理的なバリアのことです。
駅に階段しかない、手動で開けるドアが重たい、自動販売機のボタンが押せない、飲食店に車椅子のスペースがないなど普段生活を送る上で利用がしにくい、あるいは生活を送ることが困難な場合があります。
階段に併設されたスロープなどは、皆さんも一度は目にしたことがありイメージしやすいのではないでしょうかと思います。このように物理的なバリアを壊すために設置されている物とは別に、もともとの目的とは違う点でバリアを壊すことができている例もあります。
それが鉄道による自殺を減らすということを目的に設置され始めたホームドアのことです。当時は自殺に限らず、目の不自由な方や酔った人がホームから落下してしまう事故も発生していました。
ホームドアを設置することで転落による事故は激減し、自殺はもちろん目の不自由な方の転落事故を劇的に改善できているとされています。
もともとは、「自殺予防」だったものがバリアフリーとしても機能して安心して電車を利用できることにつながっています。
普段当たり前のように自動ドアは使われていますが、自動ドアはどんな人でも手を使わずに出入りできるバリアフリーとなっています。
比較的新しいビルでも車椅子用や障がい者用のバリアフリートイレではまだ自動ドアを導入していないことがありますが、2021年に竣工された丸紅ビルでは、4台のバリアフリートイレ用自動ドアが導入されています。
オフィスで快適な就労環境を提供する上でトイレは非常に重要です。このように自動ドアをトイレに導入することは車椅子で出勤される方などにとってとても便利な設備となります。
「あったら便利だよね」ではなく、「あったら本当に助かるよね」という声が上がる事例の1つでしょう。
障がいの有無で就職、資格、サービス利用などの機会が制限されるような制度的な理由が原因となっているものが制度的なバリアとされています。
例えば「障がいがあることによって試験などで制限がある」、「お子様連れ来店不可」などが挙げられます。
また以前は、盲導犬を連れて利用できないレストランやホテルがありましたが、平成15年10月から身体障害者補助犬法により、盲導犬などの同伴は断ることができなくなっています。
このように制度的なバリアを取り除く動きはありますが、まだまだ不自由を感じてしまうことは多々あるでしょう。
以前から障がい者の選考はありましたが、国の行政機関全体で雇用していた障がい者の人数が公表されていた数値とは違うことで一時期問題となっていました。
こうした事態を受けて、2018年から国家公務員の障がい者の選考試験がスタートしました。そのおかげで障がい者の雇用が促進され、障がい者の公務員試験への申し込みも増えています。
しかし、定着率にまだ課題があるようです。制度的なバリアに対する取り組みができても、人間関係などの意識上のバリアやその他の要因が解消されなければ社会への参加が難しいということがわかる事例でしょう。
「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」の制定にあたって自治体に寄せられた報告を確認すると、障がい児の入園拒否に関する事例が多発していることがわかったようです。
千葉県の事例を見てみると、障がい児への差別ともとれる発言が多発しており、障がい児を子供に持つ親が非常に不便な境遇にあることがわかります。
下記に、事例を一部引用します。
事例①
保育所の面接時、「腐った魚のような目をしている。障がい児の母は働かないで自分の子供の面倒を見なさい」と言われた。
保育所で受け入れ拒否され、半日で帰宅させられたが保育料は満額取られた。学童保育で、受け入れ拒否され「自閉症の子がいなければ普通の子が10人入れる」と言われた。
事例②
保育所に入所の申し込みをしたところ、既に障がい児を受け入れている事実があるのに、「障がいを持っているお子さんは受け入れていない」と言われた。同じ障がいを持っている子同士をも分けるような対応は差別的だ。
事例③
3人目を妊娠しているとき、保育所の申し込みに行ったら福祉事務所の窓口で「障がい児がいるのになぜもう一人産むのか。次の子も障がい児かもしれないのに。」と非難された。
出典:条例制定当時に寄せられた「障害者差別に当たると思われる事例」(福祉).千葉県.より引用
上記のように、障がいを理由に断る差別的な行動や発言が目立っていました。
こうした事態を受けて自治体として改善提案を出してはいますが、今もなお差別を受けてしまうケースもあるようです。
このようなことがあれば、制度的な理由から働けなくなってしまうだけでなく親子ともに精神的な苦痛を伴います。制度を変えて誰もがバリアを感じずに、共生できる社会を築くためには、時間と労力がかかってしまいますが、バリアをなくすことは重要だとでいえます。
文字からは少しわかりづらいですが、何かを読んだり、信号がわからなかったりなど情報や文化活動の機会が得られないことを文化・情報面のバリアと指しています。
特定の情報が伝わらない場合、視覚障がいや聴覚障がいの方は、大切な情報を認知できず、不便を感じることがあります。
「新聞が読めない」、「レストランのメニューがわからない」、「地震の警報が聞こえない」、「アナウンスが聞こえない」など例を挙げるときりがありませんが、生活を送るときに非常に困ることが多いでしょう。
このようなバリアに対してどのようなバリアフリー事例があるか確認していきます。
先ほど取り上げたように「文化・情報面でのバリア」は、様々な例があります。
このような問題はなかなか改善が難しく現在でもバリアを取り除く取り組みが少ない傾向にあります。
そこで重要になってくるのが、意識上のバリアを取り除くことです。
意識上のバリアは人によるバリアで、心ない言葉、偏見や差別など障がいのある人を受け入れないバリアのことを指します。
差別や偏見の自覚がなくても無意識に傷つけてしまったり、バリアフリーに対する理解がないことで、いつの間にか自分の行動がバリアになっていることもあるでしょう。
皆さんもこんな経験はございませんか?
上記のように、差別や偏見を持っている自覚がなくても、何気ない行動が誰かにとってバリアになってしまっていることがあります。
このような意識上のバリアを取り除くためには、一人ひとりが多様な生き方や社会の多様性を守るために、意識を変えていかなければなりません。そのために社会でどんな取り組み事例があるのか確認していきましょう。
旅館、飲食店、観光案内所、博物館などの観光施設を対象にした認定制度で、バリアフリー対応や情報発信に取り組む姿勢のある観光施設に認定マークを交付することで、認定マークのある観光施設でご高齢の方や障がいのある方がより快適で安全な旅行を満喫できるようになります。
バリアのない旅行を目指して環境を整備することで利用者はもちろん地域活性にも繋がります。
東京都の「心のバリアフリー」好事例企業として株式会社ファミリーマートの事例が取り上げられました。
<以下引用> 出典:東京都「心のバリアフリー」好事例企業.東京都.
①全国への職域拡大や評価制度による昇格で働きがいのある職場づくり
障がいを持つ社員が活き活きと働くことができるよう、障がいの特性を考慮し、様々な職種で店舗、本社、営業所、農場など全国へ職域を拡大。多様な力が活かせるようジョブローテーションの実施や、評価制度による昇格、スキルアップが目指せる仕組みを構築。また、障がいを持つ社員や上司のサポートや相談窓口を設け、職場定着をサポートすることで離職率は低くなっています。
この取り組みで注目すべきポイントは、評価制度についてしっかりと考慮をして、昇格やスキルアップを目指せる仕組みが用意されていることです。さらに、相談窓口を設置することで、悩みを抱え込まずに働くことができるようになります。
同時に、意識上のバリアを取り除くための取り組みも実施されており、障がいへの理解を促進するために体験型プログラムが用意されています。
②障がい体験プログラムや、障害を持つ社員との交流会の実施
社員の障がいへの理解促進のため、様々な体験型プログラムやミニ手話講座を実施しています。車椅子体験、聴覚過敏体験、聴覚言語障がい体験や、障がいを持つ社員と共に働く「就労体験」や「交流会」を実施しています。障がいを「体感」することで気付きが得られたとの声が挙がっています。また、障がいの基礎知識を深めるため、オンラインセミナーも実施しています。
③障がいを持つ社員が働く農場での就労体験、地域密着の取り組み
障がいを持つ社員が農場で有機野菜を栽培し、近隣の店舗で販売する地域密着の取組を実施し、地域での障がいの理解を促進。その様子を全社で体感するため、新卒新入社員全員、及び希望する社員が農場での就業体験実習を行っています。また、農場で働く社員の家族を対象とした業務報告会や収穫祭を実施することで、家庭と連携して定着をサポートしています。
当社の親会社である、株式会社エスプールも好事例企業として東京都で事例掲載されています。当社エスプールでは、2021年12月からD&I推進グループ(ダイバーシティ&インクルージョン推進グループ)を設立し、社内での多様性を守りながら障がい者雇用の推進に力を入れています。
<以下引用> 出典:東京都「心のバリアフリー」好事例企業.東京都.
①D&I推進グループと現場との連携による雇用支援
既存の部署から障がい者雇用を創出し、採用と定着の支援をしています。採用前の実習から入社時の現場理解研修、入社後の定期面談まで現場従業員と連携をとりながら実施。月1回有給の通院休暇を取得できる制度も導入し、パフォーマンスが発揮できる職場環境づくりに注力しています。また、D&I及び障がい者雇用に関する声に答える専用相談窓口を設置しています。
②あらゆる従業員に向けた多様な社内コンテンツの発信
障がい者雇用の理解促進と適切な配慮のため、『合理的配慮ガイドブック』を作成しました。また、D&Iについて理解を深めるため『D&I便り』を毎月配信。全従業員を対象としたe-ラーニングを年に1回開催しています。他にも障がいのある従業員を受け入れる管理者に向けた研修動画や、障がいがある従業員に向けた社内及び福祉制度の案内動画などの多様なコンテンツも導入しています。
※エスプールでも活用しているe-ラーニング「PivottAサステナ」については、本記事の後半でご紹介しています。
多様性を守り、誰もが社会やコミュニティに参加できる環境を作るためにいつでも始められることが心のバリアフリーです。一人ひとりの意識が変わることで意識上のバリアを取り除くことができるでしょう。自分のバリアに気づいたとき「〇〇しましょうか?」「何かお困りですか?」など勇気を出して声をかけてみることがバリアを取り除く一歩となります。
具体的にどのような点に意識を向けるべきか、心のバリアフリーに取り組む際の、ポイントを押さえておきましょう。
心のバリアフリー|取り組むポイントは2つ
<自分とは違う様々な人に対しての差別意識をなくそう>
<気づいたときにコミュニケーションをとろう>
心のバリアフリーに取り組むにあたり重要なことがあります。それは「気づいてコミュニケーションをとる」ということです。「あ、今困っているかも。」と気づいたときに、勇気を出して声をかけてみましょう。
このように取り組む人の意識次第で心のバリアフリーはすぐに取り組むことができますので、ぜひみなさんも今日から取り組んでみてはいかがでしょうか?
社内のサステナビリティに対する理解を深めるために、研修などを検討されていませんか?当社が提供する「PivottAサステナ」が課題解決をサポートいたします。
サステナビリティの社内浸透を促進するために動画配信サービスで、企業のサステナビリティ推進をご担当されている方に向けて「PivottAサステナ」をご提案させて頂いています。
PivottAサステナで解決できる!
〜サステナビリティに関するお悩み〜
✓ 社員の関心が低い
✓ 協力体制を築けない
✓ 取り組みの成果が見えない
PivottAサステナは忙しい社員の方にも見てもらえるよう、サステナビリティに関するコンテンツを3分程度の短時間にまとめた動画を配信しています。
心のバリアフリーに関する動画のみならず、サステナビリティに関する研修動画が豊富に用意されています。
ご導入企業は200社を超え、ご利用人数は10万人を突破しておりその9割が上場企業となっております。
プランや詳細をご覧になりたい方は、下記のボタンから「PivottAサステナ」の公式ページにアクセスしてみてください。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
<出典>
・バリアフリーとユニバーサルデザイン.総務省.(参照2025.07.09)
・条例制定当時に寄せられた「障害者差別に当たると思われる事例」(福祉).千葉県.(参照2025.07.09)
・観光施設における心のバリアフリー認定制度.観光庁.(参照2025.07.09)
・東京都「心のバリアフリー」好事例企業.東京都.(参照2025.07.09)