情報開示って必要?――情報開示を怠ることによる デメリットとは

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情報開示って本当に必要?

これまでのコラムではTCFD、CDPなど情報開示に関する様々な対応をご紹介してきました。2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されて以来、企業が取り組むべき課題の一つとなった「サステナビリティに関する情報開示」。投資家などから強く求められている一方で、商品やサービスを販売する時とは違い、すぐに成果が出るものではありません。そのため「実際に開示してはいるけれど、開示し続ける意味はあるのかな?」と、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、情報開示に対応しないことで生じるデメリットについてご紹介します。 

海外では罰金などの措置事例が発生

現状日本では、情報開示をしなかったことに対する罰金はなし。一方海外では罰則を受ける例がいくつか発生しています。 

【Case1:イギリス】情報開示不十分で罰金 

2英年金規制機関の「The Pensions Regulator(TPR)」は、エネルギー企業大手「エクソンモービル」の年金基金に、5,000ポンド(約91万円)の罰金を請求しました。その理由は「気候変動に関連する情報を適切に開示しなかったから」。イギリスで気候変動関連の情報開示に対して罰金が求められた、初めての事例となりました。 

イギリスでは、2021年からTCFDによる情報開示の義務化を段階的に推進中。2025年までにイギリス経済全体で完全義務化することが発表されています。 

TCFD義務化までのタイムライン図

対象となる企業は上記タイムラインに沿って拡大される予定。企業は定められた期日までに、気候変動に関する報告書をウェブサイトで公開しなければなりません。 

時価資産70億ポンド(約1兆3千億円)以上のエクソンモービルは、50億ポンド(約1兆円)以上の資産を持つ企業として、この気候変動に関する報告書の公開対象に。エクソンモービルは期日までに作成していたものの、事務的なミスにより期限の6日後に報告書を公表したため、罰金の対象となったのです。 

ちなみにイギリスではエクソンモービルのような違反があった場合、以下のルールに沿って強制的に罰金が科せられます。 

報告書を公表できなかった際に課された罰金の例 図

今回対象となったエクソンモービルは、2023年5月に罰金を支払い済み。2023年7月にこの問題は解決されています。 

【Case2:アメリカ】開示不十分&虚偽内容で制裁金 

2022年5月、米証券取引委員会(SEC)は米銀大手のバンク・オブ・ニューヨーク(BNY)メロンの子会社を、「投資先のESG(環境・社会・企業統治)に関する情報開示が不十分であり、虚偽の記載をしている」として告発。制裁金150万ドル(約1億9000万円)を科しました。 

BNYメロンの投資アドバイザーは、2018年7月から2021年9月まで、ファンドのすべての投資対象が「ESGの品質レビューを受けている」とさまざまな声明で表明または暗示。しかし実際には、特定のファンドが保有する多数の投資対象が、投資時点ではESGの品質レビュースコアを持っていなかったことが判明したのです。 

この調査結果に対しBNYメロンは認めも否定もせず、業務停止命令とけん責と150万ドルの罰金の支払いに同意。SECはこうした事例が起こる背景に、ESG投資に対する投資家ニーズの高まりがあると言及しています。そのニーズを受け、投資アドバイザーやファンドは、ESG戦略を採用したりESG基準を取り入れたりしている投資案件を、ますます提供・評価するように。SEC執行部資産管理部門の共同責任者は、「今回の事例のように、投資選択のプロセスにESG要素を組み込んでいることを正確に説明できていない場合、SECは投資アドバイザーに責任を問う」と述べました。 

約94%が情報開示によるメリットを実感

ご紹介したイギリスやアメリカの事例のように、海外では虚偽の報告や“適切で十分”とは判断できないために罰金が科せられた事例が出てきています。だからこそ実態に沿った詳細な情報開示を行うことが大切。もちろん「情報開示をすることによって、メリットを感じた」と考える企業は、多く存在します。 

たとえばTCFDの調査によると、TCFD賛同やTCFDに沿った開示をした非金融系の321回答機関のうち、302機関(約94%)がメリットを感じている、または期待すると回答。具体的なメリットとして「投資家を含む金融機関等との関係向上」「自社の気候関連リスクと機会についての社内の理解が深まった」などがあげられました。

TCFDの調査アンケートの結果図

処罰対象になる前に、適切な情報開示を

今回のコラムでは適切な情報開示を行わないことのデメリットや、それにまつわる措置の事例についてお伝えしました。不十分な情報開示により、海外では罰金を科される企業も複数出てきている現在。日本では措置命令にとどまっていますが、将来的には海外に倣って罰金が科せられる可能性も大いにあると言えるでしょう。「情報開示で企業価値を向上させること」にとらわれ実態と開示情報が乖離してしまわぬよう、定期的に原点に立ち戻り「適切で十分な開示ができているか」再確認してみると良いかもしれませんね。 

出典: 

『改訂コーポレートガバナンス・コードの公表. (2021, June 11). 日本取引所グループ. 』 

『GOV.UK. (2020, November 9). Chancellor Sets out Ambition for Future of UK Financial Services. 』 

『First Climate Change Reporting Fine Issued by TPR, as Use of Powers Continues. (2023, September 28). The Pensions Regulator』

『Interim Report Interim Report of the UK’s Joint Government-Regulator TCFD Taskforce. p.13 (2020, November). HM Treasury』 

『SEC Charges BNY Mellon Investment Adviser for Misstatements and Omissions Concerning ESG Considerations. (2022, May 23). U.S. SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION』 

『2023年度 TCFDコンソーシアム TCFD開⽰・活⽤に関するアンケート調査 (会員アンケート集計結果)〔公開版〕 p.16. (2023, September 29). TCFDコンソーシアム』 

ブルードットグリーンのサービスについて

弊社は CDP気候変動コンサルティングパートナーとして、環境経営や気候関連の情報開示のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。

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