GXリーグは、2050年カーボンニュートラルに向けて企業が連携して新たな市場の形成やルールの創造に向けた枠組みとして2023年4月より始まりました。
2026年度よりGX-ETSが本格的に開始するなどGXリーグの注目は高まっています。本コラムでは、そんなGXリーグの概要を幅広く紹介していきます。
目次 Index
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝てる企業がGX(グリーントランスフォーメーション)を牽引する枠組みのことです。そうした企業が官・学・金でGXに取り組むプレイヤーと共同し、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行うことが目的となっています。
GXリーグへの参画企業は、2024年度に新たに179者が参画し、2024年3月時点で747者となりました。これは、日本のCO2排出量の5割超を占める企業群になります。
GXリーグが設立された背景はいったいなんでしょうか。
まず、きっかけはとなった出来事は、2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」です。この宣言を受け、策定されたのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」となります。グリーン成長戦略では、産業政策とエネルギー政策の側面から成長期待の高い分野の実行計画を策定し、国としての目標と具体的な見通しが示されています。
その後、経済産業省の研究会にて更なる議論により、2021年12月に「GXリーグ基本構想案」が提言、2022年2月に発表がされ、2023年4月より本格的に活動し始めました。
ここからはGXリーグの活動について紹介していきます。GXリーグでの活動は、主に「排出量取引制度(GX-ETS)」、「ルール形成を通じたグリーン電力市場創造、「ビジネス機会の創発」、「企業間交流の促進」の4つがあります。
まず1つ目は、「自主的な排出量取引(GX-ETS)の実践」です。これは、参画企業が自ら目標を掲げて、GX投資とGHG排出量の削減を実践する場となっています。
2026年度からは、GX-ETS第2フェーズが始まります。第1フェーズは試行段階となっており、そもそもの参加や目標の設定、目標の達成も自主的なものでしたが、第2フェーズからは本格的に排出量取引制度を実施していく予定です。2025年7月2日には、経済産業省よりカーボンクレジットの利用上限を10%とするような案が出るなど注目が高まっている活動になります。
排出量取引制度に関しては、こちらのコラムをご覧ください!
2つ目は「ルール形成を通じたグリーン市場の創造」の活動です。ここでは、WG(ワーキンググループ)が存在し、WGごとにルールの設計から実証、世界への発信等を行うことを目指しています。
現在、以下のような6つのWGが存在し、新市場創造に向けてルール形成の議論を行っています。
2025年7月16日には、2025年度の「市場ルール形成の場」の取組として「GX製品社会実装促進WG」、「GX経営促進WG」、「GX人材市場創造WG」、「中間排出事業者を通じたグリーン市場創造検討WG」が組成されたことが発表されました。
3つ目は、カーボンニュートラルを前提とした新しいビジネス機会創発に向けて、GXリーグ参画企業とGXに関連したスタートアップの連携・事業創発を支援する活動です。
2024年度には、「GX領域研究者とのマッチングイベント」と「GXスタートアップとのマッチングイベント(ネイチャーポジティブ)」の2つのイベントが開催されました。これらのイベントでは、参加者同士での活動の共有や意見交換等が行われています。
4つ目の活動として、さまざまな業界が集まり、気候変動対応に関する企業の関心事項や実務上の課題についてディスカッションや情報交換を行います。「GXスタジオ」という情報交換の場や、2024年度からは、より直接的な対話や意見交換を行えるようにした「GXサロン」が開催されました。
それぞれのイベントでは、「サプライチェーンの脱炭素」や「CFP算定」、「ESG情報開示」などのテーマで開催されてきました。2022年度以降の各イベントでの開催テーマについてまとめたものが以下となります。
GXリーグへの参画には、企業にとってさまざまなメリットがあります。
GXリーグは、政府主導のGX推進に向けた枠組みであるため、参画することにより投資家や顧客への信頼獲得につながる可能性が高まります。
GXリーグに参画している企業は幅広い業種であり、参画企業間で新たな市場創造に向けたルール形成の機会を得ることができます。
GX-ETSにおいて、企業はNDC水準に対して直接排出の実績が下回る場合、その差分を「超過削減枠」として売却が可能です。
冒頭、GXリーグへの参画企業数は700者を超えると紹介しましたが、その中から一部を抜粋して参画企業の取組を紹介します。
関西電力株式会社は、2023年度より、GXリーグの市場ルール形成の取組である「GX経営促進WG」や「適格カーボン・クレジットWG」、「GX人材市場WG」への参加、「GXスタジオ」など、ビジネス機会創発の場の取組にも積極的に参加しています。
川崎重工業株式会社は、「適格カーボン・クレジットWG」への参画を中心に活動しています。具体的には、ネガティブエミッション技術の早期社会実装のためにカーボンクレジット方法論の提言などを行っています。
大成建設株式会社は、2022年度に、GX未来創造策定WGのコアメンバーとしての共同提案や「GX経営促進WG」への参加とWG内基本方針に従った削減貢献量の情報開示、GXスタジオへの参加などを行っています。2023年度には、「グリーン商材付加価値WG」への参加もしています。
このほかにも業界を問わずさまざまな企業がGX推進に向けた取組を実践しています。
最後にGXリーグへの参画方法について紹介します。
GXリーグに参加するには主に2つの資格が必要です。
①日本法に基づく法人格を有すること又は国内で事業を行う外国会社(会社法第2条第2号に定め
る「外国会社」をいう。以下同じ。)であること
②本規程に遵守することを表明すること
以上の2つの資格をもつ企業は参画が可能ですが、さらに「GXリーグ参画企業に求める取組」の実施にコミットすることも必要です。この「GXリーグ参画に求める取組」について詳しく見ていきます。
参画企業の属性が、主な業務が「金融業・保険業であるか否か」で内容が少し異なりますが、大きく「自らの排出削減」、「サプライチェーンでの取組」、「グリーン市場創出」の3つの項目でそれぞれに取組があります。
1つ目の「自らの排出削減」では、2030年度の排出量削減目標と中間目標の設定が必要です。また、2050年以前のカーボンニュートラル宣言と実現のための「トランジション戦略」の策定・公表、GX-ETSの目標進捗やカーボンクレジット取引状況の公表へのコミットなどがあります。
2つ目の「サプライチェーンでの取組」では、上流の事業者への排出削減支援や計画作成、下流の需要家・生活者へのCFP表示などの意識醸成・計画作成が必要です。参画企業の属性が「金融業・保険業」の場合は、上流、下流の部分が投融資先や引受先などになります。
3つ目に「グリーン市場創造」では、教育機関やNGOなどとの気候変動に関する対話の機会や計画、イノベーション創出や製品・サービス、カーボンオフセット商品の市場投入によるグリーン市場の拡大に取組などがあります。
企業は参画後、これらの項目の取り組み実施状況を報告し、実施できなかった場合は今後の実施計画などを作成する必要があります。
本コラムでは、GXリーグの概要から参画企業の取組まで幅広く紹介しました。
GXリーグには、さまざまな企業が2050年カーボンニュートラルに向けて取り組んでいますが、現時点では制度設計やルール、評価などはまだまだ発展途上であり、固まりきっていない面も見受けられます。
一方で、2026年度からGX-ETS第2フェーズとして本格稼働となり、規制強化やルール設定などに向けて議論が活発化されていくと予想されるGXリーグ。脱炭素に向けた市場のルール形成や企業間連携を先導する実践の場として、今後、社会への影響力がさらに高まることが期待されます。
弊社では、GX-ETSに活用可能なJ-クレジットの創出支援サービスやプロバイダーとしての役割を担っております。J-クレジットを含め、カーボンクレジットに関するお悩みがありましたら、弊社までご相談ください。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
<出典>
GXリーグ規程. GXリーグ事務局. (2025.07.09参照)
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略.経済産業省. (2025.07.09参照)
排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針. (2025. July)経済産業省GXグループ. (2025.07.11参照)
ルール形成を通じたグリーン市場の創造(市場ルール形成WG). GXリーグ. (2025.07.11参照)
ビジネス機会創発(スタートアップ連携等)GXリーグ. (2025/07.09参照)
企業間交流の促進(GXスタジオ/GXサロン). GXリーグ. (2025/07.09参照)
参画企業のGX実現に向けた取組. GXリーグ. (2025.07.11参照)
GXリーグ参画要綱~How to Join the GX League~. (2023. February). GXリーグ事務局. (2025.07.10参照)