【CBAM最新情報】2025年10月「改正規則」のポイントと実務対応

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ついに2026年1月から本格適用が始まったCBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism/炭素国境調整措置)。EUのGHG削減目標の一環として2023年5月に設立された、対象製品をEU域内に輸入する事業者に課徴金の支払いが求められる新たな規則です。
2025年10月には改正規則が最終化され、本格適用目前にも関わらず制度内容の変更も発生しました。
本記事では、そんなCBAMの仕組みや簡素化の概要、本格適用後のポイントなどを解説していきます。最後までご覧ください。

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CBAM(炭素国境調整措置)とは

CBAM(炭素国境調整措置)とは、EU域外から輸入される鉄鋼やセメントなどの製品に対し、その製造時に排出されたCO₂量に応じた「炭素価格」の支払いを求める制度です。気候変動対策が緩い国への生産移転(カーボンリーケージ)を防ぐことを目的としています。

CBAMの基礎から学びたい方はこちらをご覧ください!

CBAMとは?
EUのCBAMとは?導入スケジュールから、企業に求められる対応まで分かりやすく解説

【最新情報】2025年10月改正規則のポイント

詳細に入る前に、今回の改正規則(Regulation (EU) 2025/2083)の全体像を整理します。日本企業の担当者が押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 免除基準の変更: 「1回の輸送あたり150ユーロ未満」から「年間50トン未満(輸入者単位)」へ移行
  • 目的: 中小企業(SME)の事務負担削減と、大口輸入者への管理強化
  • 緩和措置: 2026年の本格適用開始時に必要な「CBAM証書」の保有義務などを一部緩和
  • 本格適用: 予定通り2026年1月1日から開始(報告+課金義務)

改正後のスケジュール

改正規則適用後のスケジュール
出典:EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)解説 (基礎編). (2024, May). 日本貿易振興機構(ジェトロ) 調査部. / Regulation (EU) 2025/2083 of the European Parliament and of the Council of 8 October 2025 Amending Regulation (EU) 2023/956 as Regards Simplifying and Strengthening the Carbon Border Adjustment Mechanism. (2025, October 17). Official Journal of the European Unionを基に弊社作成

今回の改正で重要なのは、「ルールの簡素化は行われたが、本格適用の開始時期(2026年1月)は延期されない」という点です。また、簡素化により1回目の報告書(2026年度の報告書)の提出期限が、2027年9月末に延期されました。

移行期間から本格適用への切り替え

2025年末をもって「報告のみ」の移行期間は終了し、2026年1月1日からは法的・金銭的義務が発生する「本格適用期間」へと切り替わります。

フェーズ 期間 企業の主な義務 改正による影響
移行期間 ~2025年12月
  • 四半期ごとの排出量報告のみ
  • (金銭的負担なし)
特になし。既存の報告義務を継続。
本格適用 2026年1月~
  • 「CBAM証書」の購入・提出義務発生
  • 第三者検証(Verification)の必須化
  • 手続きの簡素化が適用開始
  • (免除枠の拡大、登録プロセスの円滑化など)

デミニミス基準の変更:金額から数量へ

今回の制度改正の最も大きな変更点は、免除対象を決める「デミニミス(少額・少量免除)基準」の刷新です。

「150ユーロ」基準の廃止と新基準

これまで、1回の輸入あたり「150ユーロ未満」であればCBAMの対象外とされていました。しかし、今回の改正によりこの金額ベースの免除は廃止され、以下の「数量ベース」の新基準に置き換わります。

項目 旧ルール(廃止) 新ルール(2026年~適用) 実務への影響
デミニミス基準 150ユーロ未満 / 回 年間50トン未満 / 輸入者 金額に関わらず、数量のみで判定されます。
判定単位 輸入(通関)ごと 輸入者ごとの年間累積 都度の輸入が少量でも、年間合計が50トンを超えれば全量対象となります。
対象品目 全対象品目 鉄・アルミ・セメント・肥料
※電力・水素は対象外(免除なし)
電力や水素は、どんなに微量でも報告・義務の対象として残ります。

実務上の注意点

この変更は、中小企業(SME)の事務負担を軽減する一方で、小口輸入を繰り返す大企業には管理強化を求めるものです。

・合算での管理

「年間50トン」は、対象となる全品目(例:鉄のボルト+アルミ板)の合算値です。「鉄は40トンだから大丈夫」と思っていても、アルミを15トン輸入していれば合計55トンとなり、免除は適用されません。

【ポイント】
「150ユーロ以下のサンプルだから申告不要」という従来の判断基準はなくなります。
今後は「自社の年間輸入総量が50トンを超えるか否か」が、対応要否の分かれ目となります。

体化排出量の算定と緩和措置

免除対象とならない企業(年間50トン以上輸入する企業)にとって課題となるのは、「体化排出量(Embedded Emissions)」の算定です。今回の改正では、いくつか緩和措置が盛り込まれました。

そもそも「体化排出量」とは?

CBAMで課金対象となるのは製品そのものではなく、その製造プロセスに埋め込まれた(体化した)CO₂等の排出量です。ここで注意すべきは、一般的なGHGプロトコルの算定方法とはルールが異なるという点です。

項目 CBAM 体化排出量 GHGプロトコル
(Scope 1, 2, 3)
算定対象 「製品1トン」あたりの排出量 「組織(会社全体)」の排出量
境界
(バウンダリ)
EU規則が定める厳密な境界
(特定の前駆物質の排出を含むなど)
自社が支配する組織境界
(サプライチェーン排出はScope 3で算定)
データの流用 不可
(専用の計算ルールに従う必要あり)
Scope 1, 2, 3データをそのままCBAM報告には使えない

算定には以下の2種類の排出量が用いられ、品目によって報告範囲が異なります。

  • 直接排出(Direct Emissions)
    • 工場での燃料燃焼や、製造プロセス(化学反応など)から直接発生する排出
  • 間接排出(Indirect Emissions)
    • 製造プロセスで使用した電力の発電に伴って発生する排出

※鉄鋼・アルミ・水素は当面「直接排出」のみが対象ですが、セメント・肥料は「間接排出」も計算に含める必要があります。

簡素化パッケージによる主な変更点

2026年1月からの本格適用に向け、実務負担を抑えるため、以下の緩和措置が導入されます。

  • 証書保有義務の緩和(80% → 50%)
    • 四半期末時点で口座に用意しておくべき「CBAM証書」の数量が、これまでの年初からの累積体化排出量の80%相当から50%相当に引き下げられました。企業のキャッシュフロー圧迫が軽減されます。
  • 電力品目の計算簡素化
    • 「電力(Electricity)」の輸入に関しては、計算対象を「直接排出のみ」とすることが明確化されました。複雑な発電ミックス(間接排出)の計算が不要となります。
  • デフォルト値の活用(条件付き)
    • 原則は「実データ」ですが、炭素税導入国からの輸入については、EU委員会が認定した「デフォルト炭素価格」を計算に使用できる枠組みが整備されます(2027年以降)。

【ポイント】
簡素化されたとはいえ、サプライヤーから「製品1トンあたりの排出原単位」を取り寄せる義務は残ります。Scope1 2,3の定義づけとは異なるので、主要サプライヤーとのデータ連携基盤を確立することが重要です。

まとめ

2026年1月よりCBAMは本格適用期間に入りましたが、企業には実務を整えるための猶予や経過措置が用意されています。日本企業として焦らず着実に対応を進めるため、以下の3つのステップで計画を立てることを推奨します。

  • EU拠点の「輸入許可」を確保する(〜2026年3月末)
    EU域内に現地法人を持つ企業や、EUの輸入パートナーと取引がある企業にとって、当面の最優先事項は「物流を止めないこと」です。
    • 認定申請の実施(経過措置の活用): 原則として、年間50トンを超える輸入には事前の「認定」が必要ですが、2026年3月31日までに申請を行えば、審査結果が出るまでの間も「みなし許可」として輸入を継続できます。
    • 日本企業のアクション: EU現地法人が申請手続きを進めているか確認してください。もし現地法人がない場合は、輸入代理人(通関業者等)と3月末までの申請方針について合意形成を行ってください。
  • データ収集体制のアップグレード(2026年中)
    本格適用期間では、原則として「実データ(Actual Data)」の使用が求められます。
    • 実データへの移行: 2026年輸入分からは、デフォルト値の使用が厳しく制限されます。これまでは概算値で報告していた場合も、サプライヤー(日本国内の工場など)からの正確な排出量データの入手が必要になります。
    • データ連携基盤の整備: 輸出製品の排出量データを、EUの算定ルールに基づいて整理し、EU側の輸入者がいつでも使える状態で提供できる体制を整えましょう。これが、EUの顧客と取引を続けるための競争力につながります。

CBAMへの対応は単なるコスト増ではありません。改正によるルール変更を正しく理解し、着実な対応を進めることがおススメです。

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よくある質問

Q.鉄鋼やアルミ製品など複数の種類の部品を輸出していますが、新設された「50トン免除ルール」はどのように適用されますか?

A. 複数のカテゴリー(鉄鋼・アルミ・セメント・肥料)の「年間合計重量」で判定されます。

改正規則(Regulation (EU) 2025/2083)により導入された50トンの免除基準は、単一の製品カテゴリーごとではなく、輸入者(EORI番号を持つ法人)が1年間(1月〜12月)に輸入するCBAM対象物品の総重量で判断されます。

  • 合算ルール: 例えば、ある輸入者が鉄鋼製品を40トン、アルミニウム製品を15トン輸入する場合、合計55トンとなるため免除は適用されず、全量(55トン分)がCBAMの対象となります。

Q.2026年からの本格適用期間では、これまで使用していた「デフォルト値(概算値)」は一切使えなくなるのでしょうか?

A.原則として「実データ(Actual Data)」が必須ですが、例外的に使用できるケースがあります(ただし条件は厳格化されます)。

2026年1月以降の輸入分については、原則としてサプライヤー(工場)からの一次データに基づく排出量算定が義務付けられます。EU委員会が公表するデフォルト値の使用は、主に以下のケースに限定されます。

  • 複雑な製品の一部(20%ルール): 複合的な製品において、その総排出量の20%未満に相当する原材料(プリカーサー)については、デフォルト値の使用が認められる場合があります。
  • データ入手が不可能な場合: 技術的にどうしても実データが得られない場合など限定的な状況で使用可能ですが、2026年からは「罰則的な上乗せ」が適用された、高めの排出係数がデフォルト値として設定されるため、コスト面で不利になります。

Q.2026年1月に輸入した分について、すぐにCBAM証書を購入して支払う必要がありますか?

A.いいえ、支払いは2027年まで発生しませんが、財務上の準備は今から必要です。

2026年1月から「支払い義務(Liability)」自体は発生していますが、実際に金銭を支払う(CBAM証書を購入する)プロセスにはタイムラグがあります。

  • 証書販売開始: 2027年2月1日から販売が開始されます。
  • 支払い価格: 2026年に輸入した分に対応する証書価格は、例外的に「2026年の各四半期のEU ETS平均価格」に基づいて決定されます。
  • 提出期限: 2026年1月〜12月分の排出量に対応する証書は、2027年9月30日までにまとめて提出(償却)する必要があります。

したがって、今すぐキャッシュアウトはありませんが、将来の支払額を予測し、社内で予算化(引当金の計上など)しておくことが推奨されます。

監修者のプロフィール

榎本 貴仁の写真
榎本 貴仁
(株)エスプールブルードットグリーン 副社長

人材系上場企業を経て、ブルードットグリーン㈱に参画。コンサルティング事業の拡大を営業責任者として牽引。 1,000社を超えるプライム上場企業との脱炭素領域における対話を実施。上場企業の経営者、担当者が抱える課題が多種多様にわたる中、企業それぞれの状況に応じたサステナビリティ経営を伴走支援を通して日々サポートしている。

<出典>

EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)解説 (基礎編). (2024, May). 日本貿易振興機構(ジェトロ) 調査部.(2025年11月参照)

Regulation (EU) 2025/2083 of the European Parliament and of the Council of 8 October 2025 Amending Regulation (EU) 2023/956 as Regards Simplifying and Strengthening the Carbon Border Adjustment Mechanism. (2025, October 17). Official Journal  of the European Union(2025年11月参照)

Officially published: Simplifications for the Carbon Border Adjustment Mechanism (CBAM). European Commission. (2025年11月参照)

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