
昨今では、大企業のみならず中小企業でも環境配慮の活動が求められています。実際にサステナビリティ経営支援を行う弊社に対しましても、非上場企業様からのお問い合わせは日々増加傾向にあります。
「何から着手したらよいのか?」
「取引先からの要請がよくわからない…」
とお悩みの企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、気候変動課題への取り組みの一つである「中小企業版SBT」の取得についてご紹介いたします。「SBT」という既存の概念から派生し「中小企業版」としてより簡易化されているので、多くの取り組みの中でも比較的着手がしやすいものとなっています。また、取得することで様々なメリットも生まれます。
ぜひご参考にしていただければ幸いです。
目次 Index
SBTとは「Science Based Targets」の略称で、「パリ協定が求める⽔準と整合した温室効果ガス排出量削減を目指す、国際的な削減目標」のことです。この「SBT」の認定を取得することで、自社の気候変動への意欲を具体的な数値とともに明確な目標として表すことができます。
現在日本では、上場企業様の多くを筆頭に実施が進んでいる状況で、日本は世界のなかでも特にSBTの取得が活発といえます。非財務情報開示のグローバルスタンダードとして地位を確立しつつある「CDP」などにもこの数値を活用することができるようになっています。

SBTについては、下記コラムも合わせてご覧ください。
「中小企業版SBT」とは、通常のSBTとは異なり中小企業向けにプロセスや費用の負担が小さくなったものです。申請に該当するための要件や、違いについてもまとめておりますので、概要を確認していきましょう。
通常のSBTとの相違点をまとめると、以下のようになります。
| 中小企業向け短期SBT | <参考> 通常の短期SBT | |
|---|---|---|
| 対象 | 以下を満たす企業 ・従業員250人未満・非子会社・独立系企業 |
特になし |
| 目標年 | 申請年から5年以上先、10年以内の任意年 | 申請年から5年以上先、10年以内の任意年 |
| 基準年 | 2015年以降(会計年度または西暦) | 最新のデータが得られる年での設定を推奨 |
| 削減対象範囲 | Near-term:Scope1,2排出量 Net-Zero:Scope1,2,3排出量 |
Scope1,2,3排出量 但し、Scope3がScope1〜3の合計の40%を超えない場合には、Scope3目標設定の必要は無し |
| 目標レベル |
■ Scope1,2 1.5℃:少なくとも年4.2%削減 ■ Scope3 算定・削減を約束(特定の基準値はなし) |
下記水準を超える削減目標を任意に設定 ■ Scope1,2 1.5℃:少なくとも年4.2%削減 ■ Scope3 Well below 2℃:少なくとも年2.5%削減 |
| 費用 | 1回 USD 1,250(外税)~ |
目標妥当性確認サービスはUSD 11,000(外税)(最大2回の目標評価を受けられる) 以降の目標再提出は、1回USD 5,500(外税) |
| 承認までのプロセス | 目標提出後、自動的に承認され、SBTi Webサイトに掲載 | 目標提出後、事務局による審査(最大30営業日)が行われる 事務局からの質問が送られる場合もある |
出典:: TARGET VALIDATION APPLICATION CHECKLIST FOR SMEs / SBTi SERVICES TARGET VALIDATION SERVICE OFFERINGS を基に弊社作成
Scope3の提出が不要であることや、申請費用が大幅に低いことなどの違いが判ります。このように中小企業向けに取得のハードルが下がるように多くの項目で調整がされています。2024年1月1日以降に申請する企業には要件の変更が行われましたので、最新の資料を確認するようにしましょう。
大企業のみならず中小企業に対して活動を求められている背景としては、資金の出し手や消費者がカーボンニュートラル対応を重視する傾向がますます強くなっていることが挙げられます。
具体的には、
などがあげられます。
これらにいち早く対応することで、ステークホルダーからの信頼の獲得につながります。
自社が対象企業の要件を満たしているかを確認しましょう。
〈必須要件〉
下記の4項目をすべて満たす必要があります。親会社の状況なども確認が必要となりますので、ご注意ください。
【1】Scope1とロケーション基準のScope2の排出量合計が10,000 tCO₂e未満であること
【2】SDAで目標を設定する必要がないこと
【3】金融機関セクターまたは石油・ガスセクターに分類されていないこと
【4】親会社の事業が、通常版のSBTに該当しないこと
〈追加要件〉
上記の必須要件4項目に加え、以下の4項目のうちの3項目以上を満たさなければなりません。
【1】従業員が250人未満であること*
【2】売上高が5,000万ユーロ未満であること**
【3】総資産が2,500万ユーロ未満であること**
【4】森林、土地および農業(FLAG)セクターに分類されないこと
* 組織が雇用する全ての従業員数。パートタイマーの従業員を含む
** 申請を行う事業者が、新たな要件に準拠しているかの確認を行うために、収益と資産額を確認できる財務諸表の提出が必要
要件の引用出典:SMALL AND MEDIUM-SIZED ENTERPRISES (SMEs) FAQs
次に提出を進めていきます。手順は以下のようになります。
【1】SBTポータルで会社情報を登録
【2】SBT事務局による会社情報の承認を受ける
【3】SBTポータルから目標を申請する
【4】SBTによるレビューと目標の承認を受ける
【5】請求書の発行と料金の支払いを行う
【6】目標の開示(SBT等のウェブサイトにて公表)

現在では上場企業だけにとどまらず、2025年9月時点で1500社を超える企業が中小企業版のSBT申請を行っています。SBTのダッシュボード上のデータによると、日本の中小企業版SBT認定の取得数は世界一です。
SBTのダッシュボードはこちらから:Target Dashboard. SBT.
このように、中小企業でも広がりつつあるサステナビリティ情報開示。SBT取得やCDPの回答など、まずは自社での気候変動課題に関する認識を深めていくことが第一歩となります。対応についてお悩みの際には、中小企業様でのSBT支援実績もある弊社にぜひご相談ください。
人材系上場企業を経て、ブルードットグリーン㈱に参画。コンサルティング事業の拡大を営業責任者として牽引。 1,000社を超えるプライム上場企業との脱炭素領域における対話を実施。上場企業の経営者、担当者が抱える課題が多種多様にわたる中、企業それぞれの状況に応じたサステナビリティ経営を伴走支援を通して日々サポートしている。
<出典>
・CRITERIA ASSESSMENT INDICATORS FOR SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES (SME). SBT.(参照2026.02)
・SMALL AND MEDIUM-SIZED ENTERPRISES (SMEs) FAQs. SBT.(参照2026.02)
・Target Dashboard. SBT.(参照2026.02)
・VALIDATION SERVICE. SBT SME Target setting Form.(参照2026.02)
・取得企業に聞く、認定を受けるまでの道のり(日本).日本貿易振興機構.(参照2024.10.23)
・SBT(Science Based Targets)について.環境省.(参照2026.02)