TCFDの「シナリオ分析」にはプロの力が必須!内部と外部の役割分担で素早く的確な情報開示を実現

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段ボール・紙器事業を中心とした総合包装メーカーのトーモクは、「包む」をテーマに住宅事業、運輸倉庫事業を含む多彩なビジネスを展開しています。

同社のESG推進室長を務める田中秀輝氏は、サステナビリティ先進企業と言われる花王の購買部門においてESGを推進するなど豊富な知識と経験を備えていますが、TCFDの開示にあたっては外部のサポートが欠かせなかったと言います。

同社はどのようにブルードットグリーンを有効活用したのでしょうか。ESG推進室のお二方に伺いました。

TCFDの開示要求にある「シナリオ分析」にプロの力は欠かせない

株式会社トーモク ESG推進室長
田中 秀輝さん

“トーモク様の事業とサステナビリティへの取り組みについて教えてください。”

トーモクグループの事業は大きく「段ボール・紙器事業」「住宅事業」「運輸倉庫事業」の三つに分けられます。段ボール・紙器事業は、売り上げの約半分を占める主力事業で、株式会社トーモクを中心に段ボールの製造・加工や各種紙パッケージの企画・製造を行っています。住宅事業では、株式会社スウェーデンハウスを核に、北欧建築ならではの高性能な住宅を日本国内で販売・施工。運輸倉庫事業では、株式会社トーウンを核に、グループ内の段ボールや住宅部材のほか、飲料など幅広い分野の物流を担っています。

当社グループではサステナビリティ対応の強化に向け、2020年7月にESG推進室を設立。以来、CSR方針、環境方針、人権方針など非財務分野の方針策定・開示や実際の対策を推進し、2021年には社長を委員長とするサステナビリティ委員会も設立しました。特に気候変動の分野では、政府のカーボンニュートラル宣言を受けて、「2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年比で半減させる」という目標の下、取り組みを強化しています。

こうした取り組みは、これまですべて社内で行ってきました。そのスタンスを一部変更するきっかけとなったのが、2021年6月に行われた東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード改定です。これによりプライム市場の上場企業は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に準じた情報開示が必要となり、当社グループでも社内各部門のメンバーを集めたプロジェクトチームを結成して、準備を進めることになりました。ただ、TCFDの情報開示に必要な「気候変動のシナリオ分析」に関しては、社内での対応が不可能です。そこで当該分野に特化したプロの力を借りたいと考えたのです。

無料ウェビナーの内容が的確で、スピード、コスト、体制面にも満足

“なぜブルードットグリーンをTCFDの開示支援企業に選んだのでしょうか。”

TCFDの情報開示に向け、まずは社内で環境経営支援企業各社のサービスを検討し、最終的に銀行系、監査系、独立系など計5社を相談相手に選びました。ブルードットグリーンは、脱炭素、TCFD開示、CDP回答など多様なテーマの無料ウェビナーを開催されていて、その内容が的を射ていたこともあって、有力な候補としてこちらからお声掛けしました。

ご存知のとおり、TCFD開示には「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という四本の柱があり、中でも肝になるのが、先ほどお話しした「戦略」パートに含まれるシナリオ分析です。「将来の気候変動とそれに対応した社会の動きが、自社の事業にどのような影響を与えるか」を温度上昇シナリオ別に検討するのですが、さすがにこの業務を内製化できるほど高度な専門性を有してはおりません。また、開示の実務を担当するESG推進室の2名で各種の最新情報を精査しながら、災害の度合いや損害額をすべて算出するのも手に余る状況でした。

支援企業候補の各社へは「約半年先に控えた株主総会後をめどに、公式サイト上で開示したい」という当社の希望をお伝えしたのですが、そのような短期間での対応に多くの企業が難色を示し、またその費用も想定を上回るものでした。そんな中、ブルードットグリーンは、多数の会社を支援してきた実績の下、当社側の要望に寄り添ってスピーディーに対応いただける上、費用感も納得できるものをご提示くださいました。また、自社内に多数のスタッフを抱え、安心感のある体制の下でサポートしてくれる点も、導入の決め手の一つになりました。

株式会社トーモク ESG推進室 
岡本 賢司さん

情報の早さと的確さはプロならでは。積極的な「外部活用」のきっかけにも

“サービス導入で特に印象に残った点、成果や波及効果について教えてください。”

一般にTCFD開示のシナリオ分析で、事業への影響度合いを具体的な数字で示すことは多くありません。しかし当社のシナリオ分析では、私たちの事業の安定性を広く世に伝えたいと考え、グループの中核企業である株式会社トーモクを対象に、具体的な数字を示しながら開示を行うことにしました。

ブルードットグリーンは、国際エネルギー機関(IEA)が毎年発表する「World Energy Outlook」など膨大な関連情報を専門家ならではの的確さと素早さでキャッチアップしながら、細かい計算・分析もスピーディーに実行してくれました。「どの報告書のどのデータを参照したか」「どんな換算式を使ったか」といった詳細な質問にも丁寧に応じてくれたおかげで、社内にノウハウも溜められましたし、また、トップ層が集まる開示プロジェクトのキックオフ時から外部の専門家として参加してもらったことで、社内の関係者の意識も高まったように思います。

ESG推進室内のリソースに限りがある中、高度な専門性や煩雑な実務が求められる部分は外部にお任せする一方、当社側でも分析に必要なデータは素早くお渡しし、「ガバナンス」「リスク管理」など社内で対応する方が適切な部分は内製化する。この役割分担により、短期間でリーズナブルかつ的確な開示が実現できました。保険会社など社外関係者からは「具体的な数字も開示しながら良くまとめられている」とご感想をいただき、社員にも「TCFD開示にいち早く対応している」という安心感を抱いてもらえたと思います。

実はトーモクではこれまで、経営関連で外部のコンサルタントの力を借りた例がありませんでした。しかし今回のTCFD開示プロジェクトの成功を受け、他分野でも外部コンサルタントの活用が進んでいます。また今回の検討を通じ、河川の氾濫など気候変動関連で特に留意すべき点について改めて確認できた点もプラスになりましたね。

情報開示後も「開示の質と量の充実」へ向け、継続的なアップデートを

“今後の取り組み推進に向けた抱負をお聞かせください。”

コーポレートガバナンス・コードが求める「開示の質と量の充実」へより高いレベルで応えたいと考えています。具体的には、シナリオ分析の範囲を関連会社も含めた形にするよう準備中で、来年には住宅事業、再来年には運輸倉庫事業も含めた形での開示も予定しています。ブルードットグリーンは建築業界や運輸業界の実績も多いと聞いているので期待しているところです。また、開示の「質」の担保には、気象やエネルギー関連の最新の報告書、最新版のハザードマップ、事業やビジネス環境の変化などを踏まえたアップデートも必要です。その際、ブルードットグリーンのようにリーズナブルかつ確かな成果を期待できる相手だと継続的なサポートもお願いしやすいですね。

サプライチェーン全体を通じたESG対策を行う企業が加速度的に増える中、取引先からのニーズに応えていくには、環境面でも人権面でも、対応をより強化する必要があるでしょう。特に、環境対策を考える上で大きなポイントとなる温室効果ガス排出量の削減にはいっそう注力したいと考えています。また、TCFD開示のように対応に高度な専門性が必要なものも増えていますから、外部の力を借りることがますます重要になると感じています。

当社の中心的な製品である段ボールは機能性の高さに比してコストが経済的な上に環境負荷も小さく、軽量でリサイクル率も95%以上と非常に高い。この総合的な特性で段ボールを超える包材は現時点で存在せず、脱炭素社会の実現へさらに貢献できる可能性を秘めているはずです。こうした当グループの事業の性質をより分かりやすい形で発信していくため、今後も必要に応じてブルードットグリーンに相談しながら環境経営を推進していきたいですね。

[企業紹介]
株式会社トーモク
https://www.tomoku.co.jp

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