「必要な情報」を熟知したスコアリングパートナー 初めてのCDP回答で高スコア獲得を実現

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1889年に創業した総合商社の兼松は、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空といった幅広い分野の事業を世界で展開しています。気候変動対策の目標としてカーボンニュートラル、さらに「カーボンネガティブ」を掲げ、サステナビリティ対応の強化に努めてきた同社。「自社だけで対応するにはハードルが高い」と感じていたCDP回答に臨む上で、ブルードットグリーンのサービスをどのように活用したのでしょうか。社内でサステナビリティ推進にかかわるお二方に伺いました。

TCFDの開示データだけをもって、CDPに回答するのは難しい

“兼松様の事業とサステナビリティへの取り組みについて教えてください。”

私たちは電子・デバイス、食品、畜産、食糧、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の6事業を核とし、多種多様な製品・サービスを扱う総合商社です。過去に事業の選択と集中を行う中で火力発電や石炭事業などボラティリティの高い事業を手放した結果、Scope1、2を合わせたCO2排出量も3万t弱と、事業規模に比べて非常に環境負荷が低い会社であることが強みの一つだと考えています。

企業のサステナビリティ対応を重視する動きが世界に広がる中、当社では2020年4月に、経営企画にかかわる重要組織として「サステナビリティ推進委員会」を設立。企画担当の取締役上席執行役員を委員長とし、6事業部門の営業担当役員全員をメンバーとしながら、持続可能性を重要な指標として事業を展開してきました。

気候変動対策の目標としては、2025年時点で森林保全事業や二国間クレジット事業で自社創出したクレジットまたは削減貢献量と当社グループの排出量が均衡する状態を指すカーボンニュートラルを掲げています。また、2030年には、削減貢献量が排出量を15万t上回る「カーボンネガティブ」を目標として掲げ、その達成のめどが立っています。

またサステナビリティ推進委員会の設立と同時に、同委員会の事務局となる「サステナビリティ推進室」も企画部内に立ち上がり、グループ全体のCO2排出量の本格的な可視化、取引先各社から来る各種調査への回答、社内セミナーの実施、TCFD提言に基づく開示などサステナビリティに関する課題に取り組んできました。

兼松株式会社
企画部長 経営企画室長
近藤 一夫さん

2022年、CDPの調査対象が東証プライム市場の全上場企業に広がったことで、当社も回答に取り組むことになりましたが、TCFD提言に基づく開示の際のデータや分析を利用し、自社だけでCDPの回答を行うのは難しい。そう考えて、専門の知識とノウハウを持つプロの支援を受けることにしました。

設問の意図を踏まえ、ベストな回答を共に考える

“CDP回答の支援企業として、ブルードットグリーンを選んだ理由を教えてください。”

そもそものご縁ができたのは、CO2排出量の算定をサポートしてもらおうと、複数の環境経営支援企業の話を聞いていた時のことです。ブルードットグリーンは、相談した各社の中でも非常に知識が豊富であると感じ、対応も丁寧だったことから、お付き合いが始まりました。

CDPの回答は、同団体が用意した質問に対して企業が一定の様式に沿って答え、採点されるものです。大まかな開示推奨項目があり、企業側が自社の決めた形で開示できるTCFDとは異なる点です。設問の意図をしっかりと汲み取ることが重要で、例えば長文で熱心に作成した回答内容であっても、ポイントを外してしまってはスコアの向上にはつながりません。ブルードットグリーンはCDPのスコアリングパートナー(現在は気候変動コンサルティングパートナー)を務めていますから、質問の意図も背景も、求められる回答も熟知しています。そこで、ぜひサポートをお願いしたいとお声がけしたわけです。

兼松株式会社
企画部 サステナビリティ推進室長
GXアクセラレーター
池田 秀子さん

実際に回答を作成する中では、ある設問に対してわれわれがアピールしたいと考えていた要素と、設問が求める回答とが大きく異なっていることがままありました。するとブルードットグリーンから改めて設問の意図の説明があり、「例えばこんな取り組みをしていますか、関連データはありますか」など、軌道修正のための助言をしてくれます。そうしてすり合わせながら、ベストな回答を一緒に考えていきました。質問は130もありますから、各回答の整合性が取れるよう、全体の調整などをしてくれたのも大きなポイントでした。

高スコアの獲得に加え、社内の意識改革にもつながる

“サービス導入の成果と、その後の波及効果についてはどうお考えですか”

改善のアドバイスや模擬採点などで着実に課題を改善し、初めての挑戦であった2022年のCDP回答では「B」スコアを獲得することができました。この結果には、自社だけでは到底たどり着けなかったと思います。スコア獲得による国内での評価に加え、森林保全事業など当社が長年にわたり取り組み続けてきた施策が、グローバルな観点でも評価されるものであることを実感できました。

CDP回答プロジェクトに参加したメンバーにとって、サステナビリティ対応の重要性を自分ごととして捉え、理解をさらに深めるよい機会にもなりました。営業担当者を巻きこむ形で行った結果、「長期的な視野でリスクの増大が見込まれる分野は、新たな打ち手を考えていくべきだ」という事実を改めて確認し、皆で意識を共有することができました。将来に向けて大きなプラスになったと思います。

プロジェクト終了後も、ブルードットグリーンからは来年度の回答に向け、さらなるスコアアップの指針をいただきました。CO2排出量の第3者認証の活用など、よりデータ収集に力を入れることで上のスコアが期待できます。また、アドバイスを元に、年に1回だった気候関連リスクと機会の特定・評価の頻度を複数回にするなど当社の取組み体制への改善にも繋がりました。CDPの設問は毎年変更があり、2割以上が入れ替わるといわれています。それによって、新設された質問の背景や深掘りすべき箇所の分析、新しいデータなどが必要です。これに対応するためには、やはりブルードットグリーンのような外部の力が必要だと考えています。

外部の力を積極的に活用してサステナビリティ対応を強化

“最後に、今後の取り組みへの抱負をお聞かせください。”

当社では2021年に中期ビジョン「future 135」の前半三ヶ年が終了し、折り返したことを機に、企業活動で注力する5つの重要課題(マテリアリティ)の見直しを行いました。その第1に掲げたのが「持続可能なサプライチェーンの構築」です。近年、商社における投資事業の割合が高まっています。当社では6つの事業分野全体で、実際にお客様やサプライヤーと取引をしながら環境負荷の低いビジネスを継続しています。そうして築いたネットワークを武器に、地球環境保護に資する事業もさらに増やしていきます。

2022年には事業で蓄えた知見やネットワークを生かしながら、環境課題の解決につながる総合的な事業チーム組成を促す「GX推進委員会」も発足。GXアクセラレーターを含む約50名の推進者が、グループ各部門からの相談を受けながら、お客様のお困りごとを解決すべく活発な活動を継続しています。

サステナビリティの意識をグループ全体でさらに高めながら、守りの「サステナビリティ推進委員会」と攻めの「GX推進委員会」の両輪で、より地球環境に貢献できる企業を目指します。そうすることが、創業主意である「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」に沿い、先輩から受け継いだ事業を育て、後輩へとうまくつなげていくポイントになるでしょう。同時に、社外へ向けて当社のサステナビリティ活動を広く伝えていくことも重要です。グループ全体の取り組みを定量化し、裏付けのあるデータとして発信することは、その両方を行う上でプラスになるはずです。

CDPへの回答、TCFDの開示、統合報告書や有価証券報告書での情報開示、また人権関連など、サステナビリティ関連部署が対応すべき領域はさらに広がっています。変化が激しく、押さえておくべき情報も多いこの分野の業務に、社内で育てた人材だけで対応するのは時間的にもコスト的にも限界があるでしょう。今後もブルードットグリーンのような外部のプロの力を積極的に活用しながら、対応を強化していきたいと考えています。

[企業紹介]
兼松株式会社
https://www.kanematsu.co.jp

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