変化のさなかにある航空業界で着実に上向くCDPスコア、ポイントは「どの項目に注力すべきか」の的確な判断 

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航空事業を主軸に多様なビジネスを展開し、昨年、創立70周年を迎えたANAグループ。代替航空燃料の導入をはじめ、環境対応において激しい変化のさなかにある航空業界にあって積極的な取り組みを進め、2022年のCDPの気候変動の評価では「Aリスト企業」に選定。業界をリードする施策を打ち出しています。 

制約の多い事業環境で、業界をリードする取り組みを推進  

“ANAグループの事業とサステナビリティへの取り組みについてお聞かせください。”

ANAグループでは、「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」を経営理念とし、ANA、Peach、AirJapanの3ブランドからなる航空事業を中核としながら、航空関連事業、旅行事業、商社事業などのビジネスを展開しています。 

ANAホールディングス株式会社 
サステナビリティ推進部 
担当部長 
大和田 哲也さん  

ESG経営の推進にあたり、特に「環境」を重要課題の一つと認識しており、CO2排出量の削減や資源類の廃棄率の削減、食品ロスの削減、生物多様性の保全などについて、「2050年 長期環境目標」「2030年 中期環境目標」で具体的な数値目標を設定。「ANAグループ環境方針」のもと、トップを総括とする「グループESG経営推進会議」で議論やモニタリングを行いながら取り組みを推進しています。  

2050年のCO2排出量実質ゼロに向けたアプローチとして、総排出量の大部分を占める航空運送事業のCO2削減に注力しています。その鍵となるのが、バイオマスや廃食油などを原料とするSAF(持続可能な航空燃料)の利用です。しかし現時点の世界の生産量は必要量の0.1%と供給量が追いついていません。SAFを安定的に確保できる環境整備を進めると同時に、燃費向上につながる運航の実施や新航路の検討といった運航上の改善、低燃費機材への更新といった航空機などの技術革新、またネガティブエミッション技術の活用や短中期の副次的な対策としての排出権取引制度の活用も併せて実施しながら、対応を進めています。

環境関連情報の開示では、2019年3月、日本の航空会社で初めてTCFD提言への賛同を表明し情報を開示。昨年2022年にはアジアの航空会社で初めて温室効果ガス(CO2)排出削減目標のSBT認定を取得し、CDPについては2016年から回答を継続してきました。  

採点基準を熟知するスコアリングパートナーの支援で回答の精度が向上  

“CDP回答の支援企業としてブルードットグリーンを選択された理由は。”

CDPの質問数は130問以上もある上、原文は英語で書かれています。専門知識なしに日本語の訳文の意味を読み解き、設問の背景を理解した上で問いの意図に沿った回答を用意するのは簡単ではありません。さらに設問は毎年2割以上が入れ替わり、採点の基準も変更されることがありますから、前年の回答をそのまま使うわけにはいきません。 

ANAホールディングス株式会社 
サステナビリティ推進部 
澤口 真理子さん 

ブルードットグリーンとは、その前身であるマイクライメイトジャパン時代の2018年から、お客様へのカーボンオフセットプログラムのサービス提供においてお付き合いがありました。CDPの公式スコアリングパートナー(現在は気候変動コンサルティングパートナー)として、採点の基準などを知り尽くしていることから、2021年の回答よりサポートをお願いすることにしました。  

当社としてはすべての設問で一定程度の質をクリアできるよう努めてきましたが、やはり客観的な視点では、やや内容に濃淡が生じていたようです。ブルードットグリーンに設問の狙いや採点基準を解説してもらい、「この部分はもう少し丁寧な回答が望ましい」といった助言をもらいながら回答を煮詰めていくことで、2021年はBからA-に、翌2022年には最高評価のAを獲得し、引き続き2023年の回答でもバックアップしていただきました。 

環境意識の高い欧州を中心に評価され、スコアが企業の成長にも直結  

“サービス導入の成果と、その後の波及効果についてはどうお考えですか。”

CDPには具体的な数値で回答する質問が含まれています。例えば持続可能な燃料の使用割合は、世界的に供給不足なこともあって、エアライン企業が高スコアを取るのは現実的に難しい項目です。また、空港で使用する特殊車両や機器なども、これからメーカー側でEV化などが本格化していくものが数多くあります。加えて空港は国や地方自治体、空港会社などが所有しているため、新たな試みを始める際に申請・許可に時間を要することも珍しくありません。  

こうした理由により、業態として高スコアがとれない質問が存在するため、航空業界の平均スコアは上がりにくい側面があります。総合評価として高いスコアを得るには、取りこぼしなく点数を積み上げていく必要があるのです。難しい設問でも航空業界の状況や現在の取り組みを丁寧に説明するなど回答を工夫しながら、最高評価を得ることができたのは、ブルードットグリーンの支援の力が大きかったと思っています。  

CDP回答でAを獲得したことで、環境意識の高い欧州などを中心に、お客様から高い評価をいただきました。「世界がお客様」となる航空事業は、環境面にいかに配慮しているかが、法人、個人のお客様が選ぶ基準といえます。また、社内では意識改革やエンゲージメントの向上、さらに今後の採用などへの影響も大きいと感じています。CDPの質問項目は、環境対策が進んだ欧州の視点で設定されたものですから、自社の環境への取り組みを世界水準で再検討する良い機会です。経営戦略を考える上でも、非常に重要な取り組みであると認識しています。 

ESG経営を推進する上で「情報公開」と「対話」は重要な要素  

“最後に、今後の取り組みへ向けた抱負をお聞かせください。”

今後も空の架け橋として「ヒト、モノ、コトをつなぐ」事業を通じ、地球規模で社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。 

そこで不可欠となるESG経営の推進にあたって大切にしているのが、「“情報開示”を行い、社内外のステークホルダーとの“対話”から得た指摘や社会動向をもとにしながら毎年の“取り組み”を再検討・実行し、その結果について“情報開示”を行う」というサイクルです。環境関連の取り組みについて、透明性のある正しい情報を発信していくことは、多くの方と対話するための大切なベースです。 

非財務情報の開示は、より強く求められ、注目度も高まっていくと考えられます。CDP回答は、ブルードットグリーンの継続的なサポートによって企業価値向上に役立っています。やりとりは丁寧に、スピード感を持って対応していただき、変更があった設問の意図や回答のポイントについてリスト化してくれるなど、サステナビリティ推進部の業務負担も軽減されています。  

この3年で業界の動向を細かくお伝えしながら共に回答を練り上げてきたこともあり、航空業界や当グループの事業についてもさらに理解を深めてくれました。今後も力を借りながら、ESG経営の取り組みをさらに強化していきたいと考えています。 

[企業紹介]
ANAホールディングス株式会社  
https://www.ana.co.jp/group/

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