
主力製品であるポンプを中心に、送風機やコンプレッサ・タービン、半導体製造装置などを手がける産業機械メーカーである、荏原製作所様。創業から110年以上にわたり事業領域を拡大し、社会インフラや世界の産業を支えてきました。海外市場を中心に順調に業績が伸びる今、同社はサステナビリティ対応をどのように捉え、CDP回答をはじめとする情報開示に向き合っているのでしょうか。サステナビリティ対応業務に携わるお二人に伺いました。
目次 Index
“荏原製作所様の事業とサステナビリティへの取り組みについて教えてください。”
当社は、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」「環境」「精密・電子」の5領域で事業を展開する産業機械メーカーです。大学発ベンチャーとして1912年に創業して以来、ポンプをはじめとした流体技術を応用し、戦後復興や高度経済成長、情報化社会への移行といった世の中の動きに合わせ、社会・産業インフラ、廃棄物処理、半導体関連などへと事業の幅を広げてきました。現在は世界111か所に拠点を構え、アジアに加え、北米・欧州などでも事業を拡大しています。特に海外市場での売上が堅調で、市場成長を背景に、近年は売上が増加しています。
こうした事業環境の変化を踏まえ、当社は2020年に、長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。気候変動による異常気象や自然災害の激甚化、高度情報化社会の進展といった大きな変化に対し、当社の技術を通じて社会課題の解決・改善に貢献していく姿勢を明確にしています。その背景にあるのは、インフラ設備の提供から始まった当社の歴史と、創業以来受け継いできた「世の中をより良くするための企業でありたい」という思いです。E-Vision2030の策定を機に、当社では長期的視点で目標を定め、そこから逆算して必要な取り組みを整理する「バックキャスト型」へと目標設定の考え方を切り替えました。
サステナビリティに関する情報開示の要請は2010年頃からあり、社会的信頼の獲得を目的に対応してきました。広く公開される以上、高い評価を得ることが望ましいですが、スコアによって外部からの評価が可視化される点は気がかりでもありました。そうした状況の中で、2020年以降は、投資家をはじめとするステークホルダーからの要請の増加や、設問内容の複雑化など、流れが大きく変わった実感がありました。そこで当社が重視したのは、「開示のための開示」になっていないか、という点です。単にトップレベルを目指すのではなく、「評価が継続的に向上しているか」「指摘事項を改善するために、何を具体的に進めるか」といった観点を大切にし、実態を伴った開示になるよう取り組んでいます。
“支援企業としてエスプールブルードットグリーンを選ばれた理由を教えてください。”
当社は2010年からCDP質問書への回答を開始し、当初は自社で対応していました。その後コンサルティングサービスを利用してスコアは向上したものの、「どの取り組みや回答が評価につながったのか」を十分に把握できなかったのです。そこで、スコアリングの仕組みや設問の意図を理解したうえで、改善策まで一緒に整理できるパートナーを探した結果、出会ったのがエスプールブルードットグリーンでした。

特に魅力を感じたのは、支援期間中に一度、回答案を作成いただける点です。当社のリソースを抑えられることも大きな魅力ですが、それ以上に「どの視点で回答すると評価につながりやすいか」を具体的に把握できる点に強く惹かれました。また、他社とサステナビリティに関する意見交換をする中で、「CDP回答はエスプールブルードットグリーンのサポートを活用している」とクチコミを耳にしたことも、依頼の後押しになりました。
“実際にCDP回答のサポートを受けていかがでしたか。”
各設問で「どのような回答が求められているのか」が明確になり、当社が実施してきた取り組みを評価につなげやすくなりました。これまでは「スコアが低いのは、当社の取り組みが進んでいないからだ」と思い込んでいましたが、必ずしもそうではないことに気づけたのです。CDPの設問は難解で意図を捉えにくい面がありますが、投資家など外部から求められる要素が反映されています。エスプールブルードットグリーンの支援を通じて「社会から何が期待されているか」「自社のどの取り組みがそれに合致するか」を把握できるようになりました。
また模擬採点の際に、得失点状況や得点率、各項目のスコアを一覧で確認できるアウトプットを提示いただけた点も有用でした。経営陣へ報告する際には、不足している取り組みや評価されている項目について、具体的に説明する必要があります。支援によってその点が整理されたことで「ここは網羅性が不足して得点にならなかった」「この取り組みを強化すれば得点につながる」と説得力をもって説明できました。加えて当社はエネルギー市場でも事業を展開しているため、得点を得にくい設問もあります。支援を受ける中で、「自社の特性上、得点が難しい設問」と「改善によって得点できる設問」を切り分けられるようになったことも意義深かったです。
“サービス導入の成果と、その後の波及効果についてはどのようにお考えですか。”

当社は2024年のCDP質問書で、初めてA−スコアを獲得しました。結果そのものも成果の一つですが、それ以上に大きかった成果として、「当社が目指すべき立ち位置」について、経営層を含めて改めて議論できたことが挙げられます。当社では、外部からの評価を目的とした開示ではなく、サステナビリティの取り組みをステークホルダーにきちんと知っていただける開示を行うことが重要だと考えており、こうした認識は、CDPをはじめとした情報開示を通じて経営層にも浸透してきました。現在は、取り組みを適切に反映して獲得したスコアを踏まえたうえで、「企業価値を拡大し続けるための開示内容の充実」について、現実的で冷静な議論ができています。
社内では、不足している点を具体的に自覚できるようになったことも大きな変化です。特に水セキュリティ質問書では、どれだけ網羅的にデータを収集できるかが重要になります。これまでも海外拠点のデータは集めていましたが、2025年のCDP回答では収集範囲をさらに広げ、2024年比で約3倍の拠点情報を回答できました。こうした前進は、スコア向上の成果の一つだと捉えています。適切に評価されることで取り組みへの肯定感が生まれ、スコアが低い状態よりも前向きに改善へ取り組めるようになりました。
さらに2025年は、サステナビリティを切り口に投資家との個別対話を行うなど、市場とのコミュニケーションにも力を入れています。これまでは投資家全体向けの説明会が中心でしたが、投資家が当社の将来にどのような期待を持っているのかを対話によって具体的に把握する機会を設けました。こうした取り組みが企業価値の向上にもポジティブな影響を与えると考えています。
“最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。”
当社では2030年までに達成すべき、GHG排出量削減・水の管理・廃棄物処理に関する環境目標を設定しており、達成に向けて着実に歩みを進めています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、2040年までに道筋を描くことが不可欠です。また今後は、環境に加えて人権やガバナンスなど、サステナビリティ全体を意識した取り組みを進めていかなければなりません。特に海外拠点が増加する中で、「円滑なグループ経営」は大きな課題です。海外市場の拡大は当社の成長に不可欠である一方、統制が届きにくくなるリスクも伴います。今後はリスクと機会をより適切に管理し、サプライチェーン全体を含めて、持続可能な形で事業を拡大していくことが重要だと考えています。
[企業紹介]
株式会社荏原製作所:https://www.ebara.com/jp-ja/