日本における人権問題~種類と実際の事例からできることを考える~(後編)

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日本における人権問題~種類と実際の事例からできることを考える~(後編)

※本コラムは、「日本における人権問題~種類と実際の事例からできることを考える~(前編)」の続きです。まだ前編をご覧になっていない方は、ぜひ前編からご覧ください。

日本における人権問題~種類と実際の事例からできることを考える~(前編)
日本における人権問題~種類と実際の事例からできることを考える~(前編)

前編では、子どもやジェンダー、国籍、障がいの有無など、日本社会に存在する多様な人権問題の現状を、具体的な事例とともに見てきました。これらの課題は、一部の特別な人々の問題ではなく、私たち全員が当事者となりうる身近な問題です。

では、これらの複雑で根深い問題を知った上で、私たちはどのように向き合い、行動していけば良いのでしょうか。

後編では、法整備や企業の取り組みといった社会全体の大きな動向を解説し、その上で、私たち一人ひとりが日々の生活の中で実践できる具体的なアクションについて考えていきます。

今後、人権問題はどのように解決されていく?

日本における人権問題の解決に向けて、さまざまな分野で新しい取り組みが始まっています。特に、ITの進化やスマートフォンの普及によって、これまでにない解決アプローチが生まれています。

例えば、地方公共団体で取り組みが進んでいる「多言語音声翻訳サービス」は、市役所などの窓口で日本語を話せない人が母国語で申請を進めたり、説明を聞いたりできる仕組みです。これにより「国や言語が違うため、申請できず支援を受けられない」といった課題の解決につながっています。

地方公共団体だけに留まらず、企業でも人権問題の解決に取り組みが進んでいます。

例えば、株式会社丸井グループは女性の活躍推進に取り組み、2016年度~2020年度の5年間で、女性管理職数が32名から50名に増加。先頭に立ち、仕事を進める役割を持った女性社員比率を10%から14%へ増加させることに成功しています。

このように、社会全体で人権問題の解決に向けた取り組みが活発化しているといえます。

さらに、AI分野の急速な発展に伴い、自治体や企業だけでなく、個人レベルでも多様な文化や価値観へ触れやすくなりました。その結果、私たちは「何を課題とし、どのように変えていくのか」を考えやすくなったといえるでしょう。

出典:地方公共団体における 「多言語音声翻訳サービス」の 導入ガイド.総務省.(参照 2025.07.09)

出典:女性の活躍推進.株式会社丸井.(参照 2025.07.09) 

日頃から私たちができること

これまで、人権問題について種類ごとに解説してきました。人権問題の解決は、政府や企業の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの日常的な行動が重要な役割を持ちます。どの人権問題でも意識しなければならないことは、以下の3点です。

  • 相手の立場に立って考える
  • SDGsについて理解を深めておく
  • 困っている人に手を差し伸べる

これらの行動は、特別な時間や費用をかけることなく、日常生活の中で自然に実践することができます。重要なのは、継続的に意識を持ち続けることです。次項でそれぞれ詳細を解説していきます。

相手の立場に立って考える

相手の立場に立って考えることは、人権尊重の基本となる姿勢です。日常生活のさまざまな場面で、この意識を持つことが重要です。

以下に無意識に自分が差別的な考えになっていないかをチェックできる早見表を用意しました。ぜひ活用してみてください。

チェック項目

チェックポイント

職場

  • 年齢で仕事内容をできる・できないなど決めつけていないか
  • 性別による役割分担の強要(例:力仕事は男性の役割、お茶汲みは女性など)
  • 出身地域への偏見と差別(例:方言を馬鹿にするなど)

SNS

  • 軽率な誤解を招く表現の発信(他者を貶す発信)をしていないか
  • 個人情報の取得など、プライバシーへの侵害をしていないか
  • 拡散・支持されている情報を鵜呑みにしていないか

日常

  • 自分の固定観念に基づく発言(他者への思いやりがない発言など)をしていないか
  • 冗談を装った差別(自分や周りだけが面白いと感じるいじりなど)をしていないか
  • 排他的な態度(ハンディキャップを持った人への当たりが厳しいなど)をとっていないか

これらの点に気をつけることで、より良いコミュニケーションと相互理解が生まれます。特に、とっさの発言では、意図せずに相手を傷つけてしまうことが多いため、一度伝える前に表現を考えるなどの注意が必要です。

SDGsについて理解を深めておく

SDGsは人権問題と密接に関連しており、特に「目標10:人や国の不平等をなくそう」は、直接的に人権問題の解決を目指しています。SDGsの理解を深めることで、私たちの行動が世界的な人権保護の取り組みにどうつながっているのかが見えてきます。

以下は人権問題とSDGsの関係性を表にまとめたものです。

SDGs目標

人権課題との関連

目標4(教育)

教育機会の平等

目標5(ジェンダー)

性差別の解消

目標8(働きがい)

労働搾取の防止

目標10(不平等)

差別の解消

目標16(平和)

人権侵害の防止

これらの目標達成に向けて、個人的にも意識を向けるべきですが、より大きな影響を持つ企業が積極的に発信を行うことで、解決までのスピードが向上します。

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困っている人に手を差し伸べる

困っている人への支援は、できることから段階的に始めることが重要です。この「できる範囲」は人によって異なりますが、何かしら取り組めることがあると思います。

例えば、英語が話せるなら、道に迷っている海外から来た方に声をかける。
その他にも、近隣から連日子どもの泣き声が聞こえたら通報するなど、小さなことでも問題ありません。

困っている人に手を差し伸べる意識を持ち続けることが重要です。
また、自分の力ではどうしようもできない時は、以下の機関に相談することをおすすめします。

相談先の機関名

相談できる内容

電話番号(全国統一番号)

人権擁護委員
(人権擁護委員, 法務省, 参照2025.07.09)

差別、虐待、ハラスメントなど

0570-003-110

法テラス
(法テラスHP, 法テラス, 参照2025.07.09)

日常のさまざまなトラブル

0570-078374

児童相談所
(児童相談所一覧, 児童相談所, 参照2025.07.09)

児童虐待、ネグレクトなど

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上記以外にも、法務省が運営している「LINEじんけん相談」など、LINEで相談できるサービスもあります。 

出典:LINEじんけん相談.法務省.(2025.07.09) 

見て見ぬふりをせずに、困っている人に相談できる先を教えてあげるだけでも、手を差し伸べるという行為になります。一人ひとりが手を取りあう意識を持つことが解決の一歩になるでしょう。 

まとめ

日本の人権問題は、社会の変化とともに新たな課題が生まれる一方で、着実に解決に向けた歩みも進んでいます。

しかし、他国と比較した際、日本は人権問題を解決できてきていると言い切れる状況ではありません。

多くの人へ影響を与えられる国や自治体、企業だけではなく一人ひとりの小さな行動が、より良い社会づくりにつながっていきます。私たち全員が人権問題の当事者であることを認識し、できることから始めていきましょう。

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監修者のプロフィール

榎本 貴仁の写真
榎本 貴仁
(株)エスプールブルードットグリーン 執行役員 営業本部長 兼 環境経営推進本部長

CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

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