SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?意味・メリット・具体的な進め方まで徹底解説

ESG
  • HOME
  • コラム
  • ESG
  • SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?意味・メリット・具体的な進め方まで徹底解説
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?意味・メリット・具体的な進め方まで徹底解説

社会や環境の変化が加速する中、企業は「本業を通じた社会課題解決」が求められるようになりました。こうした流れを受け生まれたのが、経産省も提唱している新たな経営のキーワード「SXサステナビリティ・トランスフォーメーション)」です。
しかし、ESGやSDGsとの違いが曖昧なまま、社内で「SXに取り組むべき」と言われて戸惑っている担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、SXの意味から、自社にどう活かせるのかまで、わかりやすく解説していきます。

SXとは?

SXとは「Sustainability Transformation(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」の略で、企業活動そのものを、社会や環境への配慮を前提とした「持続可能な形」に変革していくことを指します。ここで言う「持続可能」とは、環境保護だけではありません。社会課題への配慮や、ステークホルダーとの共生、経済成長といった広い意味が含まれます。

SXは、これらの価値を一体的に追求する企業変革そのもの。売上や利益だけでなく、社会や環境への影響まで考慮し、事業やビジネスモデルを根本から見直すことが求められます。単なる環境活動やCSRではなく、経営そのものの革新がSXの本質です。

経済産業省が提唱するSXの定義

経済産業省(伊藤レポート3.0)は、SXを「『社会のサステナビリティ』と『企業のサステナビリティ』を同期化させること、及びそのために必要な経営・事業の変革、ならびに投資家との対話の在り方の変革」と定義しています。これまでの「効率化」「利益最大化」だけでは、社会課題や環境問題に対応できず、企業の将来リスクが高まるという危機感が背景にあります。
国としても、日本企業が「社会に必要とされる存在」であり続けるためには、SXへの取り組みが不可欠だと位置づけています。経営層だけでなく、実務担当者や現場も一体となって取り組むべき経営の新しい常識として提唱しているのです。

SDGs・ESG・GX・DXとの違いを整理

SDGs、ESG、GX、DXなど、似た言葉は多いですが、SXはそれらを包含する“企業変革の総称”です。SDGsは国際目標、ESGは投資評価軸、GXは脱炭素化、DXはデジタル化を指します。一方、SXはそれらを「企業活動全体にどう取り入れ、変革していくか」を示す考え方。
SDGsやESGが「目指すべき社会像や評価基準」を示すのに対し、SXはそれらを企業の長期的な存続へと結びつける「経営変革」を指します。特にDXは、サステナビリティに関するデータの可視化や、リソース最適化を実現するための技術的基盤として、SXを具体化する役割を担います。

SXを掲げることで、これらバラバラに見えがちな活動を、経営戦略として一貫性を持たせることができます。これが他との大きな違いです。

用語 概要 位置づけ
SDGs 国連が掲げる2030年までの持続可能な開発目標 目指すべき方向性
ESG 環境・社会・ガバナンスの観点での投資評価基準 目指すべき方向性
GX 脱炭素社会に向けたグリーントランスフォーメーション 取り組みの手段
DX デジタル技術による業務・ビジネスモデルの変革 取り組みの手段
SX 社会・環境課題を起点とした企業変革そのもの 企業変革の総称・上位概念

なぜ今、SXが求められているのか

近年、気候変動や資源制約、人口減少など、企業を取り巻く外部環境は大きく変化しています。これらはもはや社会課題ではなく、経営リスクそのものといえるでしょう。さらに、カーボンニュートラルや人権尊重などの国際的な要請も高まり、企業には対応力が求められています。従来の経営手法だけでは対応が難しい新たな課題が増えている時代に入り、変化への適応力が競争力を左右するようになっています。SXは、これら不確実性の高い時代を生き抜くための“変革の道しるべ”として注目されています。

投資家・市場が求める「中長期価値」への期待

ESG投資やサステナビリティ評価の浸透により、投資家は企業の短期的な利益だけでなく、長期的な価値創造力を重視するようになっています。特に、気候変動対応や人権配慮など、社会課題への取り組み姿勢は、企業評価や資本市場での信頼を左右します。財務指標だけでは測れない「未来への準備」が求められているのです。SXは、こうした投資家や市場の期待に応えるための経営変革アプローチとして、多くの企業が注目し始めています。

SXが企業にもたらすメリットと経営インパクト

社会課題への対応だけでなく、経営にもたらすメリットは大きく3つあります。

  • 中長期の企業価値向上
  • 競争力・リスク耐性の強化
  • ステークホルダー信頼向上

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

企業価値向上・中長期成長への貢献

SXへの取り組みは、単なる社会貢献活動ではありません。社会課題を解決するビジネスモデルへ変革することで、企業の成長機会を広げ、競争優位性を築くことができます。社会や市場のニーズを先取りし、新たな価値を提供することで、今後の収益拡大や新規市場開拓にもつながるでしょう。SXは従来のCSRや環境活動をさらに発展させた、積極的な経営戦略。短期利益だけでなく、中長期の成長ストーリーを描き、持続的に企業価値を高めることができる取り組みといえます。

競争力・リスク耐性の強化

気候変動リスクや規制強化、サプライチェーン混乱など、企業を取り巻く不確実性は高まる一方です。SXに取り組むことで、こうしたリスクをいち早く察知し、先回りして対応できる柔軟な経営基盤を築くことが可能になります。リスクをチャンスに変える力を高めることで、他社との差別化や市場での優位性も確保できます。競争力強化とリスク耐性の両立は、これからの企業経営に欠かせない視点といえるでしょう。

ステークホルダー信頼向上・ブランド価値向上

SXを掲げ、社会課題解決に向けた取り組みを進める企業には、消費者や投資家、従業員、地域社会など多くのステークホルダーからの期待と信頼が集まります。単なるイメージ向上ではなく、実態としての取り組みを示すことで、企業ブランドの価値向上にもつながります。社会から選ばれ、応援される企業へと進化することは、人材採用や顧客獲得、投資呼び込みといった経営全体への好影響をもたらすでしょう。

自社にとってのSXとは?考えるべきポイント

SXは「社会課題の解決を通じた企業価値向上」が本質です。では、自社で何から考え、どこから取り組むべきか。3つの視点に整理してご紹介します。

自社の「存在意義(パーパス)」を見つめ直す

SX推進の第一歩は、自社が「社会にとってどんな存在であるべきか」を明確にすることです。売上や利益だけでなく、社会や地球環境にどう貢献していくのか。これを言語化することで、事業や経営判断に一貫性が生まれます。パーパスは単なるスローガンではありません。社員やステークホルダーが共感し、自分ごととして行動できる「企業の軸」となります。経営トップだけでなく、現場も含めて自社の存在意義を対話しながら深めていくことが重要です。

既存事業・バリューチェーンの見直し

SXは新規事業を始めることだけではありません。むしろ、既存事業やバリューチェーン全体を「持続可能な形」に変えていく取り組みこそ本質です。例えば、調達先や製造工程、物流、販売、廃棄に至るまで、環境負荷や社会的課題にどう向き合うかを見直すことが求められます。すべてを一度に変える必要はありません。自社の強みや影響の大きい領域から着手し、段階的に変革を広げていくことが現実的なアプローチとなります。

SXの推進体制・社内浸透の設計

SXは一部の担当部署だけで進めるものではありません。経営層、各事業部門、現場、バックオフィスまで、全社を巻き込む推進体制づくりが必要です。そのためには、トップメッセージの発信や、部門横断の推進チーム設置、全社員向け研修やワークショップなど、社内浸透を促す仕掛けが欠かせません。また、部門ごとに「自分たちに何ができるか」を考え、行動につなげる文化づくりも重要です。全社一体で取り組む体制づくりを目指しましょう。

具体的に何から始めればいい?SX推進ステップ

SXの重要性を理解しても、「何から始めるべきか」で止まってしまう企業も少なくありません。
取り組みを前に進めるために、3つのステップに分けて考えることがポイントです。

①自社課題・機会の洗い出し

最初のステップは、自社の事業が社会や環境に与える影響を見える化することです。気候変動対応や資源利用、人権・労働環境など、影響の大きいテーマを特定し、リスクと機会を整理しましょう。社内だけでなく、サプライチェーンや顧客も含めた「バリューチェーン全体」を対象に考えることが重要です。課題だけでなく、自社だからこそ提供できる価値や強みも洗い出し、ポジティブな機会として捉える視点が求められます。

②経営戦略・事業戦略への統合

次に、洗い出した課題や機会を、経営戦略や事業戦略に統合するステップに進みます。単なるCSRや環境施策として切り離すのではなく、本業としてどのように取り組むかを具体化することが大切です。新規事業の立ち上げだけでなく、既存事業の強化やビジネスモデルの見直しも含めて検討します。経営層の意思決定だけでなく、各事業部門が自分事として取り組めるよう、具体的なアクションプランに落とし込むことが成功の鍵になります。

③KPI設定と取り組みの継続管理

取り組みを継続的に進化させるためには、進捗を定量的に把握できるKPI(重要業績評価指標)の設定が欠かせません。例えば、温室効果ガス排出量削減目標や、リサイクル率向上、サプライヤー監査実施率など、具体的な数値目標を設定します。また、目標達成状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて施策を見直すPDCAサイクルを回すことも重要です。取り組みを“やりっぱなし”にしない仕組みづくりが、SX推進を継続的な企業価値向上につなげます。

他社事例に学ぶSXの実践ポイント

「理屈はわかったけど、具体的なイメージが湧かない…。」
そんな時は、先進企業の取り組みに目を向けることがヒントになります。
ここでは、2つの実践事例を紹介します。

セイコーエプソン株式会社:長期ビジョンに基づくSXの推進

セイコーエプソン株式会社は、長期ビジョン「Epson25 Renewed」において、パーパスを「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」と策定しました。独自の技術哲学を基盤に据え、環境負荷低減と経済成長を事業活動の中で一体化させる方針を明確にしています。このビジョンのもと、全社的にサステナビリティを経営の中心に据え、技術開発や製品設計において環境負荷の低減を追求しています。例えば、インクジェット技術を活用した省エネルギー製品の開発や、リサイクル素材の活用など、具体的な施策を展開しています。これにより、企業価値の向上と社会課題の解決を両立させるSXを実現しています。

株式会社リコー:社内浸透によるSXの実現

株式会社リコーは、1990年代から「環境経営」を掲げ、CSR推進室を設置するなど、サステナビリティ経営の先進企業として知られています。リコーでは、各部門に「SDGsキーパーソン」を配置し、さらに個人の目標管理制度(MBO)において、サステナビリティに関する具体的な取り組みを評価項目に導入しています。理念教育に留まらず、人事評価制度と連動させることで、業務における実効性を担保しています。これにより、全社的な意識改革を促進し、サステナビリティを経営戦略に統合するSXを推進しています。

まとめ

気候変動や社会課題への対応は、もはや一部の先進企業だけの取り組みではありません。すべての企業にとって、中長期の成長や企業価値向上を実現するために不可欠な経営課題となりつつあります。SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は、社会課題解決と経済的価値創出を両立する「経営そのものの変革」を目指す考え方です。

「何から始めればいいかわからない」「自社には関係ないのでは」と感じている企業こそ、まずは自社の存在意義や事業の強みを見つめ直し、小さな一歩から取り組んでみることをおすすめします。既に多くの企業がSXを経営戦略に取り入れ、成果を生み出し始めています。今後、ますますその差は広がっていくでしょう。

エスプールブルードットグリーンでは、SX推進に向けた現状整理や社内理解促進のご相談をはじめ、貴社の状況に合わせた具体的な支援を行っています。
「まずは話だけ聞いてみたい」「自社に合った取り組み方を知りたい」といった段階でも構いません。ぜひ、お気軽にご相談ください。

Q&A

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは具体的に何をすることですか?
SXとは、事業やビジネスモデルを「持続可能な形」に変革する取り組みです。
例えば、脱炭素製品への切り替えやバリューチェーン見直し、社内浸透施策などがあります。
経営や事業にサステナビリティを組み込み、企業価値向上を目指す考え方です。
SDGsやESG、GX、DXとの違いは何ですか?
SXは、これらを統合的に進める「企業変革のプロセス」です。
– SDGs・ESG:目指すべき方向性
– GX・DX:手段
– SX:全体戦略を一貫させる変革プロセス
これらを一体的に進め、経営効果を高めることがSXの特徴です。
SXの取り組みは何から始めるべきですか?
まずは、自社の存在意義や影響整理から始めましょう。
– 社会や環境への影響を洗い出し、リスク・機会を整理
– 経営や事業に落とし込む方針を検討
専門家に相談するのも有効な一歩です。
中小企業や特定業種でもSXに取り組む意味はありますか?
どの規模・業種でも、SXは今後の経営に不可欠です。
取引先や顧客からの要請、競争力維持のためにも取り組みが求められます。
自社の強みを活かした小さな一歩から始めることが重要です。

監修者のプロフィール

榎本 貴仁の写真
榎本 貴仁
(株)エスプールブルードットグリーン 副社長

人材系上場企業を経て、ブルードットグリーン㈱に参画。コンサルティング事業の拡大を営業責任者として牽引。 1,000社を超えるプライム上場企業との脱炭素領域における対話を実施。上場企業の経営者、担当者が抱える課題が多種多様にわたる中、企業それぞれの状況に応じたサステナビリティ経営を伴走支援を通して日々サポートしている。

<出典>

・SX銘柄2026 募集要領. 経済産業省. (参照2026.02)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/sxbrands_boshu_2026.pdf

・伊藤レポート3.0. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-a.pdf

・価値創造経営の推進に向けて. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/019_04_00.pdf

・健康経営の進化 報告書. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/002_s03_00.pdf

・サステナビリティ経営の推進に向けた従業員の共感拡充・行動促進に関する調査報告書. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sustainability_keiei/

・価値協創ガイダンス2.0. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-b.pdf

・サステナビリティ関連データの効率的な収集及び戦略的活用に関する報告書. 経済産業省. (参照2025.05)
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230718002/20230718002-2.pdf

・セイコーエプソン サステナビリティレポート. セイコーエプソン株式会社. (参照2025.05)
https://corporate.epson/ja/sustainability/report/

・リコー サステナビリティレポート. 株式会社リコー. (参照2025.05)
https://jp.ricoh.com/sustainability/report

・リコーグループ サステナビリティレポート2025. 株式会社リコー. (参照2026.02)

https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/sustainability/report/sustainability/pdf/Ricoh%20Group%20Sustainability%20Report%202025_web.pdf?251106

・企業のSDGs取り組み事例まとめ. 講談社SDGs by C-station. (参照2025.05)
https://sdgs.kodansha.co.jp/news/case/43141/

・サステナビリティの社内浸透、3つのポイント. 東京商工会議所. (参照2025.05)
https://www.tokyo-cci.or.jp/kentei/column_interview_SDGspenetration/

キーワード