CDP・SBT・RE100の関係や違いについて

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CDP・SBT・RE100の関係や違いについて

CDP・SBT・RE100について

世界的な地球温暖化や異常気象の頻発化を受け、年々企業に対して気候変動対策への取り組みを求める傾向が高まっています。

投資家たちも企業への投資の判断基準として、環境課題への取り組みが積極的に行われているか、ということを考慮するようになってきています。

そのような状況下で、昨今企業の気候変動対策について情報開示を促し、活動を評価する国際的なイニシアチブの影響力が増しています。

企業の環境課題に対する取り組みについて理解を深めていくうえで避けては通れないことが、この「イニシアチブ」というものです。

さて、そのようなイニシアチブですが調べ出すと数多く存在し、名称も略され数文字のアルファベットが並べられているだけであり、それぞれ何が違うのか分からない、という状況になってしまっている方も多いと思われます。

そこで、今回はそのような気候変動関連の国際的なイニシアチブのうち、特によく耳にするであろう「CDP」、「SBT」、「RE100」という3つについて、それぞれの概要と違いについて紹介していきます。

CDPとは

CDPとは、企業や自治体が環境に与えている影響についての情報収集・開示システムを運営する、イギリスで設立された国際的な非営利団体の名称です。

正式名称は「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」となっており、世間一般的には「CDP」というかたちで呼称されております。

また、CDPという言葉は、この組織が情報収集に用いる質問書のことを指して使われることも多いです。

なお、この質問書は温室効果ガス排出量や、気候変動課題に対応するための組織体制や戦略、実際の取り組みといった環境課題関連の内容が、選択式と記述回答式の設問が合わさって構成されています。

CDPの代表的な活動である環境関連の情報開示システムの運営は、以下のように行われています。

  • CDP質問書の回答対象企業に質問書の送付
  • 企業がオンライン上で回答
  • 評価、スコア付けされたのち、結果がCDPサイト上で公開

SBTとは

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」をもとにBDG作成

SBTとは、企業がパリ協定の求める⽔準と整合した温室効果ガス排出量削減を目指す国際的なイニシアチブの一つです。

なお、「パリ協定」の求める水準とは、「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑える努力をする」というものです。

また、SBTという名称は「Science Based Targets」の頭文字を取った言葉であり、日本語では「科学と整合した目標設定」や「科学的根拠に基づいた目標」と訳すことができます。

SBTはCDPとUNGC(国連グローバル コンパクト)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4つの団体が共同となって設立し、運営しています。

企業のSBTへの大まかな加盟(参加)手順は以下の通りです。

  • SBTに整合した目標を設定し、申請書を事務局に提出
  • SBT事務局による削減目標の妥当性を確認
  • 認定された場合、排出量と対策の進捗状況を年一回報告&開示

RE100とは

RE100とは、企業が事業活動において使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブの一つです。

「Renewable Energy 100%」(再生可能エネルギー100%)の略であり、イギリスの国際的な非営利団体(NPO)である「The Climate Group」が、CDPとのパートナーシップのもとで運営しています。

RE100に加盟する企業は、毎年再エネ目標や進捗状況をThe Climate Groupに報告する必要があります。

RE100に加盟するには、遅くとも2050年までに再エネ調達率100%を達成する計画を用意するほか、消費電力量が100GWh(日本は50GWh)以上であることが加盟条件としてあります。

SBTやRE100は目標や構想が主な内容

これまで、「CDP」「SBT」「RE100」という3つの言葉についてそれぞれまとめてきましたが、ここからは改めてそれぞれの違いについて整理していきます。

3つとも企業の気候変動対策を推進するためのものであるという点では同じですが、「CDP」は団体の名称であるのに対し、「SBT」と「RE100」は実際に取り組むうえでの指標となる具体的な「目標」あるいは「構想」と言うことができます。

また、「SBT」と「RE100」は同じ気候変動関連のイニシアチブではありますが、掲げられている目標や構想、それに合わせて対象の活動等もそれぞれ異なっています。
上記の表は「SBT」と「RE100」の大まかな違いをまとめたものです。

CDPはSBTやRE100を推進する主要団体のひとつ

先ほども述べたように、「CDP」は気候変動対策の推進を目的とした団体の名称です。
そのためCDPにはSBTやRE100のような、その名称自体が示す明確な目標はありません。

しかしCDPは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを掲げて活動しており、自身の情報開示プログラムの運営を行うほか、様々な気候変動関連のイニシアチブの運営を行っています。

実際、今回取り上げた「SBT」と「RE100」の設立や運営にもCDPは携わっています。このようにCDPは環境関連の団体として様々なイニシアチブに関わっているのです。

CDPを通じた情報開示は増加傾向にある

出典:CDPキャピタルマーケッツ紹介資料2

CDP質問書への回答を通じた企業の気候変動関連の取り組みの情報開示数は年々増加しており、2021年度には世界全体で13,000社以上の企業が実施しています。これは世界の時価総額の64%以上を占めていることになります。

そのためCDPのシステムを通じて開示された情報は、情報量が多いことに加えて企業同士の比較がしやすいという点で、投資家等による企業の気候関連の評価材料の基本として活用されています。

また、日本でも回答企業数は年々増加しており、2021年度には427社の日本企業がCDPに回答しています。


さらには2021年度までFTSEジャパンインデックスに該当する企業を基本として選定した500社(ジャパン500)がCDPの主な回答対象企業となっていましたが、2022年度からは東証プライム上場企業1,841社が回答対象企業となっています。

このようにCDPは企業の環境情報開示における基本として認知されているとともに、日本では対象企業数が大幅に増加するため、今後より一層回答企業数が増加することが予想されています。

出典:CDP 気候変動 レポート 2021:日本版

環境への影響を視野にいれた事業活動が求められている

昨今、ESG投資という言葉が注目を集めています。

そもそもESG投資とは、企業への投資において売上高や経常利益といった財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という非財務情報も考慮して行う投資のことを言います。

これは企業経営のサステナビリティ(持続可能性)を評価するという考えが普及したことに起因しています。

ESG投資の3つの要素を構成するうちの「E」(Environment:環境)では、持続可能性を守るために不可欠な環境関連の課題はすべて対象となっています。しかしその中でも中心的課題として世界中の関心を集めているのが、平均気温の上昇や異常気象の頻発の原因とされている地球温暖化、すなわち気候変動です。

そのためESG投資という考え方の浸透により、企業は投資家や金融機関から十分な投融資を受けるため、気候変動への影響を考慮し低減するような事業活動を行う必要性が生じています。

この傾向は一層の高まりをみせており、顧客や一般消費者の製品やサービスの選好基準としても企業の気候変動対策への取り組みが考慮されるようになりつつあります。

気候変動課題の解決に貢献する取り組みを企業で行うことは、単なるリスク回避だけでなくたくさんのメリットもあります。まずは自社が気候変動に対してどのような状況にあるのか理解を深めるという意味でも、また、自社の取り組みをアピールするという意味でも、CDP質問書への回答は有効な手段と言えます。

CDP回答コンサルティングについて

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【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

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